受験算数OS(オペレーティング・システム)
― 第1章:算数は「ひらめき」という誤解を解く ―
1. 「算数センス」という残酷な言葉
中学受験の世界では、「算数はひらめくセンスが最重要」と信じられています。
- 問題を見た瞬間に、解き方がひらめく。
- いくつかの条件があるのに、どこから考えたら解けるか、直感で見抜ける。
こうした「職人芸」とも呼べる感覚派優位の考え方が、多くの子どもたちを「自分には才能がない」と苦しめてきました。
2. 進学塾のスタイルが「感覚派」をさらに加速させる
大手進学塾の授業や教材は、大量の問題を解くことで「解法パターンを身につけていく」スタイルが主流です。
もちろん、大手進学塾のスタイルが悪いということではありません。
大量の問題に触れながら、解法パターンを吸収していく方法は、問題を見た瞬間に方針が浮かびやすい「感覚派」の子には、非常に効果的です。
実際、そういう子は、たくさんの問題に触れるほど、頭の中で解き方同士がつながっていきます。
しかし、論理的に1つずつ納得して進みたい子や、最初の1歩で止まりやすい子にとっては、その方法だけでは苦しくなることがあります。
「量をこなせばいつかできるようになる」という指導が、合う子には大きな力になる一方で、合わない子には、何をどう考えればよいのかわからないまま問題数だけが増えていく原因にもなるのです。
3. 「考えてから書く」から「書くことで考える」へ
算数が得意な子は、問題を見た瞬間に、頭の中である程度の方針を立てることができます。
だから、考えてから書くことができます。
しかし、伸び悩んでいる子に同じことを求めると、最初の一歩で止まってしまいます。
- 何を見ればよいのか。
- 何を書けばよいのか。
- どこから手をつければよいのか。
そこが決まらないまま、ただ問題文を見つめる時間が続いてしまうのです。
だからこそ、順番を逆にします。
考えてから書くのではなく、書くことで考えられる状態を作る。
その中心になるのが「表」です。
ここでいう表とは、ただ数字を並べるものではありません。
問題の条件を整理し、次に見るべきものをはっきりさせるための道具です。
頭の中だけで考えるのではなく、書いたものを見ながら考える。
これによって、ひらめきに頼らなくても、論理で前に進めるようになります。
まず、思考を整理するための「表」を書きます。
そして、空いているところを一つずつ埋めようとします。
すると、頭の中だけで条件を覚えておく必要がなくなります。
書いたものを見れば、次に考えるべき場所が見えてくるからです。
「ここが空いている」
「ここがわかれば、次に進める」
「この条件とこの条件を比べればよさそうだ」
そうやって、目で見ながら考えられる状態を作る。
これが、表を書くことの大きな効果です。
算数が苦手な子ほど、考える力がないのではなく、考える前に頭の中がいっぱいになっていることがあります。
表に書き出せば、覚える負担が減ります。
その分、「次に何を見ればよいか」を考える余裕が生まれます。
表を書くことは、頭の中に抱え込んでいた負担を、紙の上に移すことでもあるのです。
表は、暗算を安全に使うための受け皿にもなる
表には、条件整理とは別に、もう1つ大きなメリットがあります。
それは、暗算の結果を残せることです。
受験算数では、すべての式を律儀に書く必要はありません。
暗算で処理できるところは暗算を使った方が、負担が少なく、ストレスも少なく進められる場面があります。
ただし、暗算した結果を残さなければ、その数を覚えておくために、かえって頭のメモリを使ってしまいます。
表があれば、暗算した結果を入れる場所が決まり、次に使うときに見失わずに済みます。
暗算は、禁止するものではありません。
結果を表に残すことで、脳の負担を減らす有効な武器になります。
4. 思考の初動を「ルール化」する
当教材ラインナップの中心にあるのが、受験算数OSです。
OSとは、コンピューターを動かすための基本システムのことです。
受験算数でも同じように、問題を見たときに「何を見て、何を書き、どう考え始めるか」という基本システムが必要です。
その中心となるのが、SOSメソッドです。
SOSには、「算数で助けを求めている子を救いたい」という意味を込めています。
ただの語呂合わせではありません。
問題を解く流れそのものを、次の3段階で整理しています。
S:Start
まず、どこに注目して、何を書くか。
O:Observation
書いたものを見て、次に何を求めるか決める。
S:Solution
答までの流れが見えてきて、確実な解き方につなげる。
算数で止まってしまう子に必要なのは、いきなり解き方をひらめくことではありません。
まず動き出し、書いたものを観察し、そこから解法につなげることです。
この流れを身につけることで、算数は「ひらめき勝負」から「手順で進める学習」へ変わっていきます。
算数に必要なのは、特別なひらめきだけではありません。
正しい順番で動き出し、書いたものを見ながら考える習慣です。
― 第2章:24時間、君の隣に「算数OS」を ―
1. なぜ、普通のAIは「家庭教師」になれないのか
昨今、ChatGPT、ClaudeなどのAIが身近になりました。
しかし、それらに算数の問題を投げても、中学受験の強力なサポーターにはなりにくいのが現状です。
- 「答え」を教えすぎる:プロセスを重視する中学受験において、いきなり式と正解を提示するだけのAIは、子供の思考力を奪ってしまいます。
- 解き方がバラバラ:ある時は方程式を使い、ある時は力技で解く。指導方針が一定しないため、論理派の子はかえって混乱してしまいます。
- 「中学受験の空気」を知らない:5年生が習っている範囲、6年生が使うべきテクニックといった「学習段階」を考慮したアドバイスができません。また、受験生なら常識というものまで事細かに説明してくれて、解説のピントがずれていると思えることが多いです。
2. Google NotebookLMで、教材の中にAI家庭教師を作る
そこで私が採用したのが、Googleの最新AI技術「NotebookLM」です。
これは、特定の資料をもとにして、回答を作らせることができるツールです。
- 30年の知見を教材として読み込ませる: 私が長年の指導で磨いてきたオリジナル教材「受験算数OS」を読み込ませることで、AIが教材の考え方に沿って解説できるようにしています。
- OS(思考の基盤)がブレない: AIは、私が教えるのと同じ「まず表を書く」「平行線があるときは錯角を使う」「面積は引いて求めるを主体にして、次点が、区切る、変形する」といったルールに則って解説します。
- 教材の流れに沿った解説:AIは、私が推奨する流れに沿って、問題の着眼点から順に説明します。必要に応じて、詳しく説明したり、要点だけに絞ったりすることもできます。「S:Start(どこに注目する?)、O:Observation(次に何を求める?)、S:Solution(筋道を立てて答までつなげる)をメインにして、伝わりやすくします。
3. 【比較実験】一般的なAIと、受験算数OSを読み込ませたAIの違い
実際に、角度の難問を質問した際の「回答の質」の違いを見てみましょう。

「13番の解き方や考え方がわかりません。教えてください」と一言、入力したときの解説です。
【ChatGPTの解説】
これの13番の解き方や考え方がわかりません
教えてください
この問題は 三角定規の角(30度・60度・45度)を使って、149度から必要な角を引いていく 問題です。
① 三角定規は2種類ある
1組の三角定規とは
45度・45度・90度
30度・60度・90度
の2枚です。
図ではこの2枚が重なっています。
② 149度のところを見る
149度になっている角は、斜めの線どうしが交わってできた角です。
その内側の小さい角は
180-149=31
つまり交点の鋭い角は 31度。
③ 下のアの角を見る
アは、水平な底辺と、右上に伸びる斜め線の角です。
この斜め線は三角定規の辺なので、もとの角度(45度や60度)を利用します。
149度の位置関係から、その斜め線の傾きは 31度だけずれている と考えられるので、
45+31=76
答え
ア=76度
考え方のコツ
この手の問題は、
三角定規の角(30度・45度・60度)を見つける
外角なら180度から引く
平行・一直線の角を使う
この3つでかなり解けます。
珍しいミスだと思いますが、答が間違えています。
もちろん、一般的なAIでも、問題文や図を丁寧に入力すれば改善することはあります。
しかし、教材の方針を読み込ませていないAIでは、学習段階や指導方針に沿った説明を安定して出すことは難しいのです。
【受験算数OS(NotebookLM)の回答例】
パート1:問題の着眼点と「枠(図や表)」の準備
まずはACT1のまとめにある「①まず、どの三角形を見るか決める」から始めましょう。
図を見ると三角形がたくさんあるけれど、やみくもに角度を書き込むのはNGだね。
149度がわかっているので、ここから一番近い三角形を「①の三角形」、その隣を「②の三角形」、㋐のすぐ近くを「③の三角形」と順番に見ていく作戦を立てます。
また、この図は「1組の三角定規」が重なっている問題。
ACT1の「三角定規と角度」で学んだように、直角二等辺三角形の45度・45度・90度と、半正三角形の30度・60度・90度の数字を使う準備をしておきましょう。
問題に数字が書いていなくても、これが大きなヒントになりますよ。
パート2:枠を使った具体的な計算プロセス
立てた作戦通りに、①、②、③の三角形の順番で角度を計算していきます。
①の三角形: まずは「⑤ 180度になるところがないか見る」を使います。
149度と一直線に並んでいる角は、一直線の180度から引き算をして180-149=31度とわかりますね。
そして、この①の三角形のもう一つの角は、直角二等辺三角形のとがった角だから45度。
三角形の3つの内角の和は180度だから、残りの1つの角は180-(31+45)=104度になりますね。②の三角形: ①の三角形で求めた104度の「対頂角(向かい合う角)」が、②の三角形の1つの角になるから、ここも104度だね。
そして、もう一つの角は半正三角形の一番とがった角だから30度です。これで2つの角がわかったから、残りの角は180 -(104+30)=46度と求められますね。
③の三角形: 同じように、②の三角形で求めた46度の対頂角が、③の三角形の1つの角になるから46度。さらに、この③の三角形には、直角二等辺三角形の直角部分が含まれているから、もう一つの角は90度になります。だから、③の三角形の残りの角は、180-(46+90)=44度だとわかります。
パート3:まとめと答え
いよいよ最後の仕上げです!③の三角形で求めた「44度」のすぐ隣にあるのが、求めたい㋐です。
ここでもう一度、一直線に注目します。㋐と44度を合わせると一直線の180度になっていますね。
だから、最後の計算式は、180-44=136
これで、㋐の角度は136度だと求められましたね!
ここまでで、わからない箇所があったら遠慮せずに教えてね。
どのパートからわからないか言ってくれたら、効率よく教えられるから、よろしくね!
さすがに、ちょっとくどい気もしますが、これは調節可能で、もう少しレベルを上げて良いとか、このレベルでとか、もっと丁寧にとか指示できますし、言葉遣い、生徒との距離感も調節可能です。
Googleの良いところはこのあと、3つほど選択肢のボタンがあって、深堀が容易にできるところです。
※程々に注意しないと、膨大な時間がかかってしまうほどです。
完全な対話形式は現在のAIではかなり厳しいですが、このGoogleの選択肢ボタンで子ども側から発信しやすく、双方向の指導と言えます。
この比較で大きいのは、答えが合っているかどうかだけではありません。
一般的なAIの回答は、途中の見方が曖昧で、なぜその角度を使うのかが見えにくくなっています。
一方、受験算数OSを読み込ませたAIは、「①の三角形、②の三角形、③の三角形」と見る順番を決め、教材の解説に沿って順に角度を求めています。
子どもに必要なのは、答えを知ることではありません。
「どこから見ればよいか」「次に何を求めればよいか」という思考の流れを身につけることです。
4. AIは、感情面のサポートも得意です
AI家庭教師に質問することも可能です。
AI家庭教師は感情的になりません。
それでいて、人の気持ちに寄り添うことができます。
ここだけは、AIに軽く指示をするだけで、基本的にAIにお任せで大丈夫です。
- 子どものモチベーションを上げる
- 子どもを励ます
- 子どもに勇気づける
- 子どもを褒める(認める)
- 子どもに自信を持たせる
- 子どもを楽しませる
- 子どもに改善ポイントを冷静に指摘する
知識があり、説明がうまく、感情的にならず、子どもの気持ちにも寄り添える。
そのすべてを高い水準で満たす家庭教師は、現実にはなかなか多くありません。
AIの価値は、答えを早く出すことではありません。
子どもが止まったところから、もう一度考え始められるようにすることです。
利用手順は、とてもシンプルです
- 受験算数OS(中学入試算数リスタート)を購入
- GoogleNotebookLMを利用
- 受験算数OSの本編教材を学習
- 受験算数OSの練習問題を学習
- わからない問題はGoogleNotebookLMに質問
- 余裕があれば、受験算数OSの実力問題(応用編)に挑戦
- わからない問題は、また、GoogleNotebookLMに質問
中学入試算数リスタートは、完全オリジナルカリキュラムです
5年生の7月に「比」を学習する
このカリキュラムで最も重視したのは、「5年生の7月に『比』を学習する」 という一点です。
「比」の前に、本当に学習したい単元
比を学ぶ前に、やっておきたいのは次の単元です。
- 角度
- 面積
- 体積・表面積
- 場合の数
- 規則性
- つるかめ算
- 平均算
- 消去算
大手塾との決定的な違い
大手塾では、さらに
- 数の性質
- 過不足算
- 容積
- 速さ
- 割合
を、比を学ぶ前に学習します。
しかし私は、それらを学習するリスク、無駄があると考えました。
あえて「後回し」にした理由
数の性質
→ 暗記型になりやすく、理解が伴いにくい
→ 早い段階で扱うのは、最小公倍数・最大公約数に限定
→ 本格学習は新6年生から
過不足算
→ 比を学んだ後なら、「単価×個数=合計金額」で一気に理解できる
→ 比の後に配置
容積・速さ
→ 比とセットで扱うテーマが多い
→ 比の後に学習した方が合理的
割合
→ 比の前に分数で解くより、
→ 比を学んでから、できるだけ整数で解く方が身につく
→ 比と同時進行
たどり着いた結論
この順番で整理すると、受験算数は「新5年生の2月スタート」がピッタリという結論に達しました。
難関校を目指す方へ
四谷大塚偏差値65以上の難関校を目指す場合は、
- 4年生で、角度・面積・場合の数を徹底学習
- 特に場合の数は「誰にも負けない」レベルまで仕上げる
これが理想です。
それ以外の方へ
難関校を目指さないのであれば、計算(暗算)をしっかりやるだけでも十分通用します。
4年生の通塾で上手くいっていなくても、やり直せます
もし、
- 4年生から塾に通っているが算数が伸びない
- 解き方は覚えているが、理解が浅い
- 学習の質が心配
こうした状態でも、立て直しは可能です。
5年生のスタートで間に合うくらいですので、心配無用です。
学習スタイルを切り替えて、
- 解き方の暗記を止め
- 理解しやすい順に学習を再開する
このリスタートを行えば、5年生の秋には十分に追いつけます。
小5スタート算数オリジナルカリキュラム
学習時期 |
学習単元 |
|---|---|
新5年生2月 |
角度・三角形や四角形の面積 |
新5年生3月 |
場合の数・規則性 |
5年生4月 |
円とおうぎ形の面積 |
5年生5月 |
つるかめ算・平均算・消去算 |
5年生6月 |
直方体の体積と表面積 |
5年生7月 |
比と割合 |
5年生8月 |
平面図形と比・食塩水の濃度 |
5年生9月 |
平面図形と比・売買損益算・仕事算など |
5年生10月 |
速さと比 |
5年生11月 |
円すい・角すい・回転体 |
5年生12月 |
流水算・通過算・時計算 |
5年生1月 |
容積・点の移動 |
ここまでの考え方から、学習時期と学習単元はほぼ必然として決まります。
学習プランは3つあります
中学入試算数リスタートを使用して学習する場合、プランは3つあります。
プラン①
5年生の1年間は家でAIとともに学習し、新6年生から塾を活用
(難関校志望・大手塾との接続を重視するご家庭)
プラン②
6年生の夏頃まで家で学習し、夏以降に塾を利用
(理解を最優先し、無理にスピードを上げたくないご家庭)
プラン③
通塾せず、必要に応じてスポット的に塾を利用
(自学自習が安定して回るご家庭)
ここで強くお伝えしておきたいのは、どのプランを選んでも、学習の軸は同じだということです。
違うのは、「どこで外部(塾)を使うか」だけです。