場合の数は演習量が大切

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受験算数では、問題を解くときに「何を書くか」がとても重要です。

ただ問題文を読んで、頭の中だけで考える。
式を何となく立てる。
思いついた数字をとりあえず計算する。

こういう解き方では、少し複雑な問題になると、すぐに手が止まります。

だからこそ、算数では、

「まず何を書くのか」
「どこに注目するのか」
「書いたものを見て、次に何を求めるのか」

という初動がとても大切になります。

表を書く。
図に条件を入れる。
比を書き込む。
整理してから計算する。

こういった「書き方」を身につけることで、問題の見え方は大きく変わります。

ただし、ここで一つ注意があります。

「書き方」を身につけたからといって、いきなり成績が上がるわけではありません。

なぜなら、同じ単元であっても、問題によって書き方は少しずつ調整する必要があるからです。

速さなら速さの表。
割合なら割合の表。
和と差なら線分図や表。

基本の型はあります。

しかし、すべての問題にまったく同じ形で当てはめれば解ける、というわけではありません。

問題文の条件に合わせて、
少し変える。
少し足す。
少し省く。
そういう調整が必要になります。

ただ、この調整については、単純に問題演習をたくさんこなせば自然に身につく、というものではありません。

割合、速さ、和と差などの文章題は、むやみに問題演習を増やすよりも、まずは書き方の基本の型をしっかり固めた方が効果的です。

型がない状態で問題をたくさん解いても、毎回その場しのぎになります。
解説を読んで「なるほど」と思っても、次の問題ではまた同じように迷います。

文章題では、演習量よりも先に、基本の型です。

ところが、場合の数は少し違います。

場合の数は、演習量がとても大切な単元です。

もちろん、場合の数にも基本の考え方はあります。

並べる。
書き出す。
数える。
積の法則を使う。
組み合わせで考える。
場合分けをする。

しかし、場合の数では、問題ごとに「どこまで書くか」「どこから計算するか」「どう分けるか」の判断がかなり重要になります。

例えば、次のような問題があります。

「1・3・4・6・7・8」の6個の数字から4桁の数字をつくるとき、4836は大きい方から数えて何番目ですか。

この問題で、できる4桁の数を大きい方からすべて書き出していくのは現実的ではありません。

8□□□
7□□□
6□□□

こういった数を全部書いていたら、時間もかかりますし、ミスも増えます。

だから、そこは計算で処理します。

8から始まる数。
7から始まる数。
6から始まる数。
このあたりは、書き出さずに個数を求めます。

たとえば、ここまでは

5×4×3×3=180個

のように計算で求めることができます。

その後、4で始まる数について、4836まで近づいていくところでは、書き出して確認してもよいですし、さらに小刻みに計算を使って求めてもよいでしょう。

大切なのは、

「書き出しきれないから、計算を使う」

という姿勢です。

最初から公式に当てはめるのではありません。
何でもかんでも書き出すのでもありません。

書き出すには負担が大きい。
だから、そこは計算で処理する。
でも、最後の細かいところは書き出した方が安全かもしれない。

この判断が必要になります。

場合の数では、この判断力がとても大切です。

そして、この判断力は、解き方を一度聞いただけではなかなか身につきません。

「ここは書き出すと大変だな」
「ここまでは計算で一気に飛ばせるな」
「この先は書いた方が安全だな」
「この分け方だとミスしそうだな」
「この分け方ならきれいに求められるな」

こういう感覚は、ある程度の演習量があって初めて育っていきます。

場合の数では、解き方を工夫する理由がとてもはっきりしています。

こう解いたら負担が大きい。
だから、別の解き方を使う。

これを肌感覚で身につけるためには、やはり演習量が必要です。

さらに、場合の数で最も大切なのは、場合分けのセンスです。

場合分けとは、その問題を見て、

「どういう分け方をすれば、解きやすくなるか」
「どこで区切れば、もれなく、重なりなく数えられるか」
「それぞれの場合を、どう求めればよいか」

を決めていくことです。

場合の数が得意な子は、この場合分けが上手です。

逆に、場合の数で苦戦する子は、数え方以前に、分け方で迷っています。

分け方が悪いと、途中でごちゃごちゃします。
もれが出ます。
重なりが出ます。
どこまで数えたのか分からなくなります。

場合の数は、計算力だけで何とかなる単元ではありません。

「どう分けるか」

ここに大きな差が出ます。

だからこそ、場合の数の勉強では、解説を見ることもとても大切です。

もちろん、答だけ見ても意味がありません。

大切なのは、

「この問題では、どういう場合分けをしているのか」

を見ることです。

良い解説を見ると、

「ああ、こういう分け方をすればよかったのか」

と感じることがあります。

これは、とても大切な感覚です。

場合の数では、この感動が成長につながります。

「この場合分けはうまいな」
「この分け方なら、確かに数えやすいな」
「自分はここで分けようとして、かえって難しくしていたな」

こういう経験を積むことで、場合分けのセンスは少しずつ磨かれていきます。

ただし、同じ問題を何度も解く反復演習だけでは、成長の進み方は遅くなります。

反復演習にも意味はあります。
基本の数え方を固めることはできます。
処理のスピードも上がります。
ミスも減ります。

しかし、場合分けの力を大きく伸ばすには、毎回同じような問題だけでは足りません。

なぜなら、場合分けは「初めて見る問題」に対して、どう切り込むかが重要だからです。

すでに解いたことがある問題では、分け方を覚えてしまっています。
それはそれで悪いことではありませんが、新しい問題を見たときの判断力を鍛えるには、少し弱いのです。

典型題をたくさん解くことも、反復演習に近い面があります。

もちろん、典型題は大切です。
基本を知らなければ、応用には進めません。

しかし、典型題だけをこなしていても、場合分けの成長はゆっくりです。

場合の数で力を伸ばすには、

質の高い、初めて見る問題を解く。
場合分けを意識して取り組む。
解いた後に必ず解説を見て、どんな場合分けをしているか確認する。

この流れが大切です。

自分の分け方と、解説の分け方を比べる。
自分の方がよければ、それでよい。
解説の方がきれいなら、それを吸収する。
自分の分け方で苦しくなったなら、どこが苦しかったのかを考える。

こういう学習を続けることで、場合分けの力は伸びていきます。

では、どの時期に何をすればよいのでしょうか。

まず、4年生では場合の数の基礎を徹底することが大切です。

この段階では、場合分けの難度を上げすぎる必要はありません。

中心にすべきなのは、並べる問題です。

定番の形になるまで丁寧に進めて、あとは一気に計算する(積の法則につなげる)

こういった基本をしっかり身につけておきます。

この時期に、いきなり難しい場合分けをたくさん扱う必要はありません。

むしろ、まずは

「場合の数は、きちんと整理すれば数えられる」

という感覚を作ることが大切です。

そして、5年生の1年間で、場合分けを磨いていきます。

5年生になると、場合の数の問題は一気に幅が広がります。

ただ並べるだけではなく、条件がつきます。
同じものが出てきます。
選び方と並べ方が混ざります。
図形や整数と絡むこともあります。
場合分けをしないと、きれいに解けない問題が増えます。

ここで必要になるのが、豊富な問題演習です。

ただし、何となくたくさん解けばよいわけではありません。

「この問題は、どこで分けるのか」
「なぜ、その分け方なのか」
「他の分け方だと、何が大変なのか」
「解説では、どう分けているのか」

これを意識しながら演習することが大切です。

場合の数は、単なる暗記単元ではありません。
単なる計算単元でもありません。
ただの作業単元でもありません。

むしろ、受験算数の中でもかなり思考力が問われる単元です。

だからこそ、基本の型だけでは足りません。

たくさんの問題に触れて、
書き出すべき場面を知り、
計算で処理すべき場面を知り、
場合分けの仕方を学び、
解説の分け方に感動し、
自分の引き出しを増やしていく。

この積み重ねが必要です。

受験算数では、多くの単元で「演習量よりも、まず基本の型」が大切です。

しかし、場合の数は例外に近い単元です。

もちろん、基本の型は必要です。
でも、それだけでは足りません。

場合の数は、演習量によって見える世界が変わります。

「これは書き出すと大変だ」
「ここは計算で飛ばせる」
「この分け方なら楽になる」
「この条件から分けると、きれいに整理できる」

こういう感覚が育ってくると、場合の数は少しずつ面白くなっていきます。

場合の数は、やみくもに解く単元ではありません。

しかし、良い問題を、場合分けを意識して、解説まで丁寧に確認しながら数多く解くことには、大きな意味があります。

場合の数は、演習量が大切です。

ただし、それは「同じことを何度も繰り返す量」ではありません。

初めて見る問題に向き合い、
どう分けるかを考え、
解説から分け方を学び、
自分の中に新しい感覚を増やしていくための量です。

この量を積み重ねた子は、場合の数で強くなります。

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