大人の解き方

かけ算の順序

小学生低学年にかけ算の順序論争があります。

私は、それに対して2回ほどブログを書いたことがありますが、意見はありますが、大した主張ではありませんでした。

理由は、小学生低学年に算数を教えていないからです。

現場にいないのに語るというのは、間違った意見になる恐れが大いにあると思っています。

かけ算の順序が将来の数学の学力に影響を与えないならば、どちらでも良いと思いますが、その順序が、理解を伴わず機械的に解ける手段として教えているならば、効果的な教育法を探求した方が良いとは思います。

私は指導のときは、基本的に「単価×個数=合計」の順にしていますが、生徒さんが「個数×単価」にしても、何も触れません。

答えまで辿り着かないときは、表で整えていくように指導しますので、そうすると、自然と「単価×個数」にはなります。

計算の順番を意識するのではなく、整えていくと、自然と順番が決まっていくというスタンスです。

どうして、計算の順番について触れないかといいますと、その「単価×個数」の計算をするのは、4年生以上なので、計算の順序に拘る必要がないからです。

比の典型題

本題に入ります。

上記の「単価・個数・合計金額」にまつわる例題を載せます。

50円玉と100円玉の枚数は合計110枚で、金額の比は5:12です。50円玉は全部で何枚ありますか。

2018大宮開成・2回

5年生のときに、比を学習し始めた頃に登場する問題です。

この問題は金額の比が書いてありますが、枚数の比が書いてある問題と混同しやすいです。

私は、表を書いて解くように指示しますので、混同することは軽減されると思いますが、5:12がイメージしにくいです。

枚数の比が5:12ならば、50円玉が5枚、100円玉が12枚のイメージで解けますが、金額の比はそこまでは単純にいきません。

表でまとめていれば、合計金額を5:12だとちょっと分かりにくく感じたら、5:12を変えてみようという考えに至りやすいです。

500円と1200円にしてみようと考えると、途端にイメージしやすくなります。

500円ならば50円玉が10枚、1200円ならば100円玉が12枚で、合わせて22枚になります。

実際はその5倍の110枚なので、実際の50円玉の枚数は、10枚を5倍した50枚になるというように、答えまで辿り着きます。

大人の解き方

これを私が自ら問題を解くとしたら、どうするかを書きます。

5/1:12/2=5:6→50と60

これで、50円玉は50枚と求められています。

散々、生徒さんには表を書くように指導していますが、私自身は、この問題ならば書きません。

分母の1と2は50円玉と100円玉の50:100を小さくしたものです。

瞬時に分かるので、いきなり1,2と書きました。

合計金額の比を1枚の金額の比で割ったら、枚数の比が求められるので、すぐに実行しています。

これは、私独自の解き方ではなく、大人だったらだいたいこう解くので「大人の解き方」と呼ぶことにします。

どう考えても、大人の解き方の方が、5:12を500円と1200円にするよりも速いです。

ここで、では導入から、いきなり大人の解き方で良いのか?という疑問が生じます。

家庭教師をしていますと、大人の解き方を導入から使う塾講師がとても多いことが分かります。

塾教材も解説は基本的に大人の解き方なので、書面の解説も、授業の解説も大人の解き方なので、それが主流になっているという状況です。

しかし、子どもは、それではなかなか自分のものにできないという現実があります。

抽象的なので、覚える算数になりがちです。

そこで「くもわ」などが役に立つのかもしれません。

5:12を500円と1200円にすればいいだけですが、大人の解き方で解かなければとなってしまうと、イメージできずに質の低い身に付け方をするという状態になります。

私が、直接指導で、このようなイメージをする方法で教えても、塾で大人の解き方を教わると、混ざって変形したりでイメージの学習が壊れてしまう生徒さんがいます。

学力が高い子は揺るぎませんが、生徒さん次第です。

壊れたら、またイメージからやり直すということで指導を続けています。

以前は、壊されることでムッときたときもありますが、いまは、町の修理屋さんのように、それが私の仕事という意識で喜んで引き受けています。

いつから大人の解き方?

しかし、上記の例題も、6年生の入試直前期ならば、500円と1200円にしないで大人の解き方で十分行けます。

私の担当する生徒さんが、6年生秋に500円と1200円にしていたら、いままでの経緯を気にせず、「5/50と12/100で、5/1と12/2で5:6だよね?」と大人の解き方に移行するように促します。

それでスムーズに大人の解き方に変わる生徒さんもいれば、イメージで解くことが癖になり、最後まで変わらない場合もあります。

移行してもしなくてもいいので、一応、提示して様子を見るだけです。

大人の解き方の扱い方は下の候補があります。

考え方がいろいろあるとは思います。

  1. いきなり大人の解き方で解説
  2. 問題を解く前にイメージが湧くような導入をし、解法は大人の解き方になるように導く指導
  3. しばらくはイメージが湧く解き方

私は3番を選んでいます。

1,2番は、大人の解き方の方が素速く解けるし、いつかは大人の解き方になるから、最初から大人の解き方で解いた方が手っ取り早いという考えだと思います。

1番と2番の違いは指導力の違いともいえます。

塾講師といっても指導方針はマニュアルで雁字搦めではなく、講師の力量、考え方、個性で授業が行われていると思います。

塾の指導で大人の解き方に適切なタイミングで変われば、それでいいですし、なかなか切り替わらない場合は、上記の通り、こちらから軽く仕掛けます。

生徒さんの学力にもよりますが、6年生の夏前くらいまでは、大人の解き方にしない方が良いと思っています。

割合に限らず、混乱していてあり得ない計算をしているならば、大人の解き方をしっかりマスターするよりは、イメージの湧く解き方でしばらくいくスタイルの方が良いと思います。

このブログが、少しでもお役に立ちましたら、お手数をおかけしますが、下のにほんブログ村のバナーボタンのクリックをお願いいたします。

TOP