国語の読解力と算数の読解力の違い

算数がなかなか伸びない生徒さんに、「国語の読解力が弱いからです」という講師がいます。

結構、いたるところで聞きます。

私は、その言葉を完全に否定しています。

ブログでも何回も書いていますので、いつも通りの意見です。

穿った見方をすると、国語の読解が原因とする算数講師は「算数が伸びないのは俺の責任じゃないよ」といっているようなものです。

国語を軽視する生徒さんを脅かす意味合いで使っている国語講師もいると思います。

 

いままで、国語の読解力と算数の読解力は異なるとは書いてきましたが、あまり具体的ではありませんでした。

今回、ネット記事で、ちょうど良い例がありました

原文はこちらです

大事なのは「読む」力だ!~4万人の読解力テストで判明した問題を新井紀子・国立情報学研究所教授に聞く

という江川紹子氏の記事です。

「メジャーリーグの選手のうち28%はアメリカ合衆国以外の出身の選手であるが、その出身国を見ると、ドミニカ共和国が最も多くおよそ35%である」という読み取りが高校生でもできないということをテーマにしています。

新井紀子氏は「以外」が読み取れていないからと結論づけていました。

それをAI読みというんですね。

4万人も調査する必要はあるか?と思いたくなるくらい壮大な調査ですね。

 

国語講師に、これ国語の読解力?と聞いてみました。

案の定、違うと返ってきました。

なぜ聞いたかと言いますと、これは算数の読解力そのものだからです。

こういう文章が自然と読み取れる子は、大抵、算数が得意です。

この読み取り力が国語の読解力そのものといわれるのならば、算数と国語の読解力は同じといって良いでしょう。

でも違うということは、国語の読解力と算数の読解力は異なるということになります。

 

算数の読解力について、詳しく書いていきます。

算数は、何をしたら良いかを判断することと、計算等の作業力で決まります。

どちらが欠けてもダメです。

計算等の作業力は、小さい差はあれど、大きな差はありません。

問題文を読んで何をしたら良いかと判断する力に大きな差があります。

つまり、算数の成績の大きな要素を占めるのは、算数の読解力といってもいいです。

 

新井紀子氏は「以外」が読み取れないと書いていますが、私は、そうは思いませんでした。

もっと重要なことが抜けていることが原因だと思いました。

 

算数の読解力は「以外」を読み取る力ではありません。

いまの問題なら、軽く、28%の35%だからドミニカ共和国は9.8%と分かりますが、算数の読解力はそれだけを読み取っているだけではありません。

まず、「メジャーリーグの選手のうち28%はアメリカ合衆国以外の出身の選手」と読んだ時点で、アメリカ人が72%、その他が28%で、4分の3がアメリカ人ということまで読み取ります。

そして、「その出身国を見ると、ドミニカ共和国が最も多くおよそ35%である」は、3分の1がドミニカか…次点はどこの国でどのくらいの比率だろうと考えていきます。

メジャーリーガーが900人くらいならば、ドミニカが100人弱で日本人の10倍くらいかと考えるかもしれません。

 

「以外」のキーワードではなく、量感を意識した読み方をするわけです。

「以外」に注目しなくても、量感を意識すれば自然と「以外」も読むことになるというわけです。

4万人のサンプルの人たちも、多くの人は、量感を意識することができていないのではないでしょうか。

 

例えば、同僚が、今月はクルマを買ったから、昼飯の予算は280円なんだといったら、かなり苦しい金欠状態だと判断します。

かなり前の浅野中学の問題で、日給が、平日と、土日で異なり、年収を計算する問題がありました。

たしか平日が8000円くらいで、土日が10000円くらいだったと思いますが、授業で、かなり高額な給料もらっているね、羨ましいなといいながら解説していき、答えは「209万円!」と言ったときに笑いがおきました。

これは、授業を受けながら量感を意識して、最初は、羨ましいなと思っていたのが、実は低年収だと分かって驚いたからだと思います。

金額の高い安いは量感を感じ取りやすいですが、金額以外も、量感を感じ取りながら文章を読んでいくことが大切です。

問題文にはなくても何倍かなどの割合を意識することがポイントです。

 

それに対して、国語の読解力は何だろうと考えると、うそや表現の裏を読み取るなどの心情や主張を読み取りながら読んでいきます。

算数は、量感を意識して読んでいきます。

算数と国語の読解力はまったく違うと言っていいと思います。

 

理科や社会や、公立中高一貫校の問題は、算数に近く、量感を意識して読む必要があります。

これは損だよ!とか、どうしてこんなに減った?とか、どうしてこんなに明るいの?とか、憲法改正の3分の2や2分の1は重い?軽い?とか、量感を意識して読むことで思考が洗練されていきます。

逆に言えば、量感を意識しないで読む人は、国語と、理社の暗記分野だけに強い生徒さんになってしまいます。

 

「以外」を読み取るていねいな読解ではなく、量感を意識して読むことで解決していきます。

それを鍛えるためには、数字を会話の中に積極的に取り入れることがポイントです。

特に、質を高めるのは、何倍とか、何%を占めるかというような割合です。

時間や金額や人数だけだと、比較になるものがないとピンときません。

 

例えば、「ビール350ミリ缶は商品価格は120円くらいだよ」といっても、なんとも思わないと思います。

「それを200円で売っていて、80円は税金なんだよ」とまでいうと、驚くはずです。

じゃ、何で飲むの?といったい何人の生徒さんに言われたことでしょう(汗)

約40%が税金と理解できると、多くのことが見えてきます。

 

数字による量感を意識した見方ができるような会話を心がけていきますと、中学受験の成功に繋がりやすいと思います。

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