- 2017年7月12日
塾で宿題が出されることが多いです。
私がサピックスで働き始めた頃は、宿題を出すのはダメという文化でした。
理由は、各ご家庭が、必要な勉強を自由に決めるから、その邪魔をしてはいけないというものでした。
宿題のかわりに数値替えの確認テストをして、それができていれば、身についたと判断できるから、宿題無しで問題無しというスタイルでした。
しかし、宿題出す派が増えてきたのか、だんだん宿題を出すことが主流となっていきました。
多くの社会人は若い頃の影響を受けて、その思想になりやすいと思うのですが、私の場合も、上記のように「各ご家庭で必要な勉強を考えて行うのが家庭学習」だと思っていますので、宿題には懐疑的なイメージを持っています。
実際に家庭教師をしても、この宿題、この子にマッチしていないなと感じることが少なくありません。
宿題について書いていく前に、家庭学習の基本姿勢として、塾の授業がハイレベルの場合は、家では易しいことをやり、塾の授業が基本重視の場合は、家では応用を取り組むことがポイントだと思っています。
よく、上のクラスだと応用問題までやってくれるから、上に行きたいと考えられる保護者もいますが、それなら家で応用問題をやれば良いのでは?と思います。
塾で基本を書き方も含め丁寧に教わり体得することと、基本は自分でできるから家でやっておいてね、いまから応用をやるよでは、前者の方が学習効果が大きいような気がします。
応用問題になると、塾の授業で100%理解することは難しいので、家で解いて、解説を理解するまでしっかり考え抜くことに比べて、学習の質が低くなる恐れもあります。
塾が易しい→家が応用
この流れの方が上手く行く子どもが多いと思います。
本題に戻ります。
宿題をたくさん出す講師が担当だったとします。
そうすると、全部やらないといけないと思いがちです。
宿題を全部やるというのは、自分のためというよりも、ルールを守るためという意味合いが強いと思います。
問題を解く時間、理解する時間は個人差が大きいので、みんな一律に同じ量でいいわけがありません。
例えば食事の量で考えてみると良いと思います。
みんな同じ量ならば、少なすぎると思う子と、多すぎると思う子がいるはずです。
私が小学生の頃は、家に帰ると「腹が減った」と言って、すぐに食事にしてもらいました。
そういった個人差を無視して決められた量を取り組むというのは、効果的な学習になるとは思えません。
課題が多くなっても1問1問丁寧に解いて、全部やるのなら良いですが、終わらせることが目的となって、雑に解く子の方が圧倒的に多いです。
担当講師が宿題点検をしてくれたとして、親身に、この書き方では力がつかないと指摘してくれれば良いですが、「認め印だけ」「赤ペンで間違いを指摘してくれる」「式を書いていれば良しとする」のいずれかの講師がほとんどだと思います。
そうしましたら、自分で律してしっかり丁寧に書いて解くようにしないと力がつきません。
そのときに、多量な勉強で落ち着いてじっくり取り組む姿勢ができていなかったら、身につけようという意識よりも、早く終わらせようの意識が大きくなり、時間対効果が低くなります。
個人的な意見としては、宿題は多いに越したことはありません。
それを全部やるのではなく、その中から、やりたい問題を選んで、選んだ問題はしっかり丁寧に解いて、集中力が切れてパフォーマンスが低下したら終わりという学習が理想だと思っています。
スポーツの世界大会に出場した日本代表の合宿先では、食事メニューがもの凄く豊富で、それを各選手がマネージングして必要なものだけを食べていくようですが、そのスタイルの勉強版です。
たくさんの課題をとにかく解き終わる速さにこだわって処理していくのは、根性を鍛えるとかの教育的効果や、あるいは社会人になったときの処世術としては有効かもしれませんが、中学受験勉強の算数においては得られるものがないだけでなく、失われるものが大きいです。
1問1問、どう書くか、どこに気をつけるか、答えが出た後は、もう少し良い方法はないか考え、できなかったときは今後はどう対処するか考えていくと、時間はかかります。
時間がかかるからといって、そういうことを端折っては勉強ではなく、課題をやりこなすという修行になってしまいます。
学力を上げるために宿題をやっていることを意識し、そのためには、終わらせることが目標では無く、1問1問しっかり取り組むことを目標にしないといけないと思います。
宿題を全部やる理由というのは、省くとテストで良い点数が取れないからというものがあります。
テストの出題範囲になっているから、やっておかないとダメというものです。
それを目標にするのは良いですが、テストで良い点数を取るために「雑でも良いから、一応、全部触れておけ」という姿勢が間違っていると思っています。
丁寧に取り組んだ問題があっていれば、それで十分で、基礎が分かれば、家で事前に解いていなくても、テストのときに考えて解けるかもしれません。
とは言え、確認テストのときは、試験時間が短めに設定されることが多いので、その狙いではなかなか高得点が取れません。
優秀で丁寧に且つ速く解けて正解にできる子どもは良いですが、結局のところ、目の前のテストで活躍したいのか、学習の質を上げていくかの取捨選択となります。
個人的には後者の方が良いと思っていますが、そのあたりはご家庭の判断になると思います。