- 2016年4月13日
受験算数といえば、「線分図」「面積図」です。
今回は線分図にクローズアップしていきます。
線分図は、算数の解法力を上げるために必須なものと考えがちです。
私が塾講師を始めた頃は、「割合と比」「和差算」「倍数変化算」「消去算」を線分図で解くのが一般的でした。
倍数変化算を線分図で解くのは、かなり大変です。
長さが同じになる部分を探して、長さをそろえるため伸ばすという作業が難しいです。
試しに線分図なしで教えたところ、はるかに簡単にマスターできました。
いま思うと、そのときから、受験算数の解法の常識を疑い始めたのかもしれません。
消去算も線分図の意味なしと判断しました。
割合と比は徐々に線分図をやめていきましたが、「残りの○分の△」という問題だけは線分図が良いと思っていました。
しかし、最近(2021年後半)から、「残りの○分の△」という割合と比の問題も、和差算も、線分図なしで教えたらどうかと考え、試しにそれで行ってみましたら、線分図は不要という結論に達しました。
つまり、線分図は、講師がかいて、生徒に見てもらって納得してもらうためのツールという扱いで十分です。
子供が線分図をかいて解く必要はありません。
さすがに小学3・4年生が和差算や、単純な分配算を解くときは、何を求めているかという実感をするために線分図をかいた方が良いと思いますが、ある程度、算数の学力がついてから割合と比を学ぶとしたら、割合と比のときには、もう線分図をかく必要はありません。
線分図が必要な問題は以下の4パターンくらいかと思います。
- 兄と弟の年令の和が30才、差が4才のとき、兄は□才
- 兄と弟と妹の年令の和が35才、兄と弟は3才差、弟と妹は4才差のとき、兄は□才
- 父は兄の年令の4倍で、父と兄の年令の和が45才のとき、父は□才
- 父は兄の年令の3倍、兄は弟の年令の2倍で、父と兄と弟の年令の和が63才のとき、父は□才
①と②は和差算で、③と④は分配算と呼ばれるもので、それぞれの単元の代表的な問題です。
数字や設定や条件を変えていくと、全部で30問くらいの教材になりそうですが、そこまでで十分だと思います。
問題文を図にするという模式図をかく力はとても大切ですが、この30問くらいで、十分、目的はかなえられます。
線分図のかわりとなるものは、表です。
計算式だけ、筆算だけ、散らばった数字だけで良いという意見ではありません。
経験をもとに状況を表にまとめてみます。
典型題 | 非典型題 | |||||||||||
算数が得意 | 普通 | 算数が苦手 | 算数が得意 | 普通 | 算数が苦手 | |||||||
線分図 | 表 | 線分図 | 表 | 線分図 | 表 | 線分図 | 表 | 線分図 | 表 | 線分図 | 表 | |
倍数変化算(比の消去算) | ○ | ○ | △ | ○ | × | ○ | △ | ○ | × | △ | × | × |
線分図が簡単にかける割合と比 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | △ |
線分図をかきにくい割合と比 | ○ | ○ | △ | ○ | × | △ | △ | ○ | × | △ | × | × |
残りの○分の△ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | × | △ |
しっかりデータを取ったわけではありませんが、いままで指導してきた肌感覚としてはこのような感じです。
算数が得意でも、非典型題になると、線分図で解くとやや陰りが見えます。
「残りの○分の△」という問題は、塾で教わった生徒さんをスカイプで指導しますと、たいてい、塾では身につけてきません。
- まず、分数を線分図に書かないように指導します。
- 比を2箇所、線の上に書き入れるように指導します。
- 端数を考えて印をつけ、線の下に端数を書くように指導します。
- 印から点線を下ろして、次の線をそこから引くように指導します。
- 線が変わると、原則的に記号を変えるように指導します。
これで3問くらい扱うと、だいたいできるようになりますが、1か月もたつと、このマニュアルを忘れてしまう子が多いです。
手順を覚える算数になっているからだと思います。
それに対して、表の場合は、教える手順がとても少なく、1か月たって忘れてしまっても、再度教えるときに、表を途中まで書けば、思い出してくれます。
線分図のかき方を覚えたか、解法の仕組みを理解したかの違いがあると思います。
これが線分図は生徒にとって、納得するためのツールで、かいて解くためのツールではないと思う所以です。
「残りの○分の△」という問題の応用問題の「最後に全体の○分の△残る」というような問題は、線分図では、比をそろえるだけでなく分配の法則を使い、負担が大きいですが、それも表にアドバンテージがあります。
算数の問題を解くときに書くものは「考えるためのツール」「解くためのツール」に分けることが大切だと思いますが、線分図は、算数が得意ならば、後者で利用しても良いというレベルに留まります。
和差算で線分図を慣れ親しんでいたら、それは変えなくてもいいですが、それ以外の分野の問題では「線分図は納得するためのツール」という位置づけをしっかり意識した方が良いと思います。
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