算数の能力は上げられる

講師が考える算数の能力とは

表題通りの内容になります。

受験関係者からは、失礼のないようにあまり触れられない話題ではありますが、一部、それを臆することなく堂々と語り、下品な印象の受験関係者もいます。

それが本質を突いた鋭い内容ならば良いですが、多くは自らの経験不足などからくる視野の狭さによる間違えたことを言い切る形で書いてあるものを見ると、やるせない気分になるのではないでしょうか。

SNSの存在が大きくなり、目的もなく、言いたいことを発信する人がとても増えた印象です。

ある典型題で、指導者から見て、子どもの能力の違いはこういうところで感じるということを具体的に書き、お役に立ちたいと思っています。

それを意識すれば、背伸びの学習といいますか、一段、質の上がった学習になると思います。

質の上がった学習をしていくことで、能力が高まることを目指します。

数の性質の典型題

問題はこれです。

0より大きく1より小さい既約分数で、分母が180となる分数の和を求めなさい。

これを見たことがないという6年生はいないくらいよく見かける問題だと思います。

解き方は、

  1. まず、180=2×2×3×3×5と素因数分解をします。※注1
  2. これで、分子が、2か3か5の倍数のときは約分できて、そうでないときは約分できないことが分かります。
  3. ベン図をかくと3円になり、負担が増すので、2と3と5の最小公倍数の30までを調べます。
  4. といっても前半の1~15で十分です。前半に1・7・11・13の4つあるので、後半も4つになり、1~30に8個あることが分かります。※注2
  5. 1~180はその6倍の48個です。
  6. そして2つたして1になる組み合わせを作ることができるので、たしていくと、48÷2=24になります。※注3

1は経験上覚えていることです。

こういう典型題で、大きい数を見て仕組みを知りたいときは素因数分解を利用することを身につけます。

2はよく学習する典型的な知識で納得しやすいので、自然とというか無意識に身についていると思います。

3は解法の知識です。

4は解法の裏技的なテクニックです。

5は流れで行けることだと思います。

6は分子の和が180になれば、1になるので、小さい数と大きい数を順にたしていくと分子の和が180になり、1になります。

算数の能力と講師のバランス

注1~注3について、算数の能力について書いていきます。

注1は、「どういう数が約分できるか仕組みを知りたい→大きな数で仕組みが分かりにくいときは素因数分解を利用する」という流れになります。

「この問題はこうする」と点で捉えていると、なかなか算数の学力は上がりません。

結果論のような解説をする講師もいますし、線となってつながるような解説をする講師もいますが、後者なら良いというわけでもありません。

線を意識するように教わらなくても、表面だけ説明されれば、自力で線となって繋げられる生徒さんもいるからです。

今回のケースでいうと、これを教わったら、初めて見るこれとは関係のない問題でも、「大きな数で因数を意識した方が良いかな?」と感じ取って素因数分解を実行できるかどうかです。

イメージで書いていきます。

  • 結果論の解説をする講師 ↔ 結果論の解説だけで自力で線となって繋げられる生徒
  • 線で繋がるような解説をする講師 ↔ 解説されれば繋がりを意識できる生徒
  • 強調してとても丁寧に上手く解説する講師 ↔ 何回も解説されて分かる生徒

これがちょうどバランスの良い状態です。

講師側が優位だと、生徒さんはくどく感じて飽きると思います。

講師側が劣ると、生徒さんは活用できないと思います。

能力に応じた指導が必要なわけですが、現状、下位クラスに行くほど、生徒さんに必要な丁寧な指導ができていないことが多いと思います。

算数の能力

注2と注3は似ています。

これが今回のブログの本題となります。

注2は「前半の個数を調べて、2倍」

注3は「2つで1になるから、個数÷2」

こんな覚える算数になっている生徒さんも多いと思います。

注2は裏技的なテクニックなので、それを身につけずに1~30を調べる生徒さんもいますが、それと、覚える算数で「前半の個数を調べて2倍する」生徒さんに、優位性に大きな違いはありません。

知識を知っているか知らないかは、問題を解く時間の短縮と、ミスの多さに影響しますが、学力に差はありません。

  • 「なぜ、前半を調べれば、後半も前半と同じになるか」
  • 「なぜ、最大からと最小からを1つずつ足していくと1になるのか」

これがこの問題のポイントです。

理由を説明されたとき、

  1. まず、理由を理解できるかどうか
  2. 理解できたときに、その仕組みを使った初見の問題に活用できるかどうか

講師側としましては、理解できないだろうなと思うときは、ほぼ説明しないと思います。

説明することで混乱する恐れがあるからです。

この子なら理解できる可能性があると思って、説明したとして、1はできて欲しい、できれば2までできて欲しいと思うのですが、1はできても2はできないという生徒さんが多いと思います。

ちなみに理由を書きますと、いくつかありますが、180は2でも3でも5でも割れるので、例えば9のように3で割れれば、「9も180も3で割れる→差の171も3で割れる」というようになり、「9が3で割れれば171も3で割れるから、9が約分できるとき171も約分できる」となります。

9と171というように、約分できるものを消していくと、たして180になるものが次々と消えるので、残る数もたして180になる数の組み合わせになります。

というように、理由は難しいです。

理由を理解するのは難しいし、それを活用することはさらに難しくなります。

  1. その問題に触れない
  2. その問題を扱うけど、覚えるように指示する
  3. 理由を説明したけど理解できない
  4. 理由は理解したけど活用できない
  5. 活用までできる

これが今回の算数の能力の5段階となります。

大事なことは活用できるかどうかです。

活用する力をつける

能力の最上位にランクするのは、活用までできる力です。

つまり、活用する力がつけば、能力が上がったといえます。

抽象的に算数の能力を上げたいと考えるのではなく、活用力を上げたいと考えた方が良いです。

上記の5段階は、極論すれば、5まで行けないなら1でいいですが、入試のことを考えると2まででいいです。

活用まで行くことが大切です。

活用とは、分かりやすい例を挙げますと、売買損益算で、

「定価や割引で売れた個数が分からない」

「でも、売れた個数の合計と売上げは分かる」

「どう解くか分かる?」

と聞いたときに、経験したことがなくても、「つるかめ算」と答えられる子がいるのです。

それが活用です。

活用を自然とできる子もいれば、問題を解いて、解説を良いヒントとして捉え、段々、活用する習慣をつける子もいます。

活用に目を向けられるように指導できる塾講師もいると思いますが、自力で問題を解いて、活用する習慣をつけることが、活用力を高め、能力を引き上げるには必要だと思います。

自力で解くときに、解説を少し見ては、また解くという小出し感が重要なポイントだと思います。

「○○だから、△△を使うんだ」という理由付けをする習慣が付けば、活用力が高まると思います。

算数の能力を高めるには、この習慣がすべてだと私は考えています。

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