トップレベルへ登り詰める子の、4・5年生の負荷のかけ方

長期シリーズで挑む「飛び級」という選択

「5年スタート」は、ゆるやかな道ではありません

受験算数OSは、本格的なカリキュラムは5年生から、とお伝えしています。この言葉だけを聞くと、のんびりした方針に見えるかもしれません。

けれど、このページをわざわざ開いてくださったあなたには、正直にお話しします。難関校を本気で目指すお子さんにとって、ここから先の道は、決してゆるやかではありません。むしろ、ある時期には相当な速さで、相当な高さまで駆け上がっていきます。そして、その速さと高さには、きちんとした理由と設計があります。

このページは、すべてのお子さんに向けたものではありません。トップレベルへ昇っていける力を持ったお子さんが、正しい負荷のかけ方で、着実にそこへ登り詰めていくための道筋です。長期シリーズ(場合の数・図形)は、その道を支えるために作られた教材でもあります。ここでは、その「飛び級」という進み方を、包み隠さずお見せします。

学力を伸ばすのは、「負荷」です

学力を大きく伸ばすとき、そこには必ず「負荷」があります。今できることの、少し上に手を伸ばす。その繰り返しでしか、人は上へは行けません。

ただ、負荷のかけ方は、決して一通りではありません。どの単元に、いつ、どれくらいの負荷をかけるのが最も効果的か——実はこれは、受験の世界でもまだ定まっていない問いです。塾によって考え方は違い、「これが唯一の正解だ」と言い切れるものはありません。

一つ、正直にお伝えしておきたいことがあります。難関校の合格実績が高いことと、負荷のかけ方が優れていることは、必ずしも同じではありません。合格実績は、もともと算数の得意な子が集まることによっても生まれるからです。私は、実績のある塾を否定したいのではありません。ただ、その看板に頼るのではなく、「どこに、いつ、どう負荷をかけるか」を、一から考え直したかったのです。受験算数OSは、その問い直しから生まれています。

難関校合格を支える、5つの分野

負荷をどこにかけるかを考えるために、まず全体像をお話しします。

中学受験の難関校合格を支えるのは、私は次の5つの分野だと考えています。
「場合の数」「平面図形と比」「速さ」「立体図形」「数の性質」
この5つが、合否を分ける主戦場です。

大切なのは、この5つにはそれぞれ、「負荷をかけるのに適した時期」がある、ということです。すべてを同時に鍛えようとするのは、得策ではありません。「速さ」と「立体図形」は、6年生で本格的な山を迎えます。「数の性質」を使った本格的な問題にいたっては、最終仕上げの6年生の秋(場合によっては夏)からで十分だと、私は考えています。早くから手をつければよい、というものではないのです。

そして、4年生から5年生にかけて、早い時期に高い負荷をかけて最も効果が出るのが、残る2つ——「場合の数」と「平面図形と比」です。この2分野は、比や割合を深く学ぶ前の段階でも、本質的なところまで踏み込める、数少ない単元だからです。だからこそ、この時期の負荷は、この2つに集中させる。長期シリーズは、まさにここに、適切な時期に負荷をかけるための教材です。

4年生の間に、どこまで登れるか

ここからが、飛び級の具体的な姿です。

トップレベルを目指すお子さんは、4年生の間に、場合の数と図形の「入門」を終えるだけでなく、その先の「標準」にまで踏み込んでいきます。

進み方には、力に応じて道があります。多くのお子さんは、易しいライト版(L)からじっくり積み上げ、「入門L → 入門H → 標準L → 標準H 」と、一段ずつ登ります。一方、すでに力のあるお子さんは、ライト版を経ずに入門H から入り、標準H へ駆け上がる道を選べます。少ない冊数で、より高い負荷を、より速いペースでかけていく——これが飛び級です。

ここで一つ、大切な区切りがあります。標準編は、後半で「比と割合」を使う内容に入ります。まだそれらを習っていない4年生の段階では、標準編は第10回まででいったん止めてください。前半だけでも、かける負荷としては十分に高く、意味があります。焦って先へ進むより、この区切りを守るほうが、力になります。残りの後半は、比を学んでから——その時期については、後ほどお話しします。

この負荷が、どれほどのものか ―― 実際の問題をご覧ください

言葉で「高い負荷」とお伝えするより、実物を見ていただくのが早いと思います。

これからお見せするのは、標準編の実際の問題です。
場合の数は最終回(第20回)
図形は標準H の第10回と、最終回(第20回)
4年生が第10回まで取り組むことを想定していますので、その第10回のレベルと、その先の第20回のレベルの両方を、ご覧いただけるようにしました。

正直なところ、これらは易しくありません。

一つ、事実だけをお伝えします。この場合の数の標準編は、数年前に最難関校へ進んだ、算数のとても得意なお子さんが取り組んだ教材です。その子は5年生いっぱいまで四谷大塚の教材(予習シリーズ)で学習していました。難しい問題で負荷はかかっていたものの、場合の数については手薄だと感じ、5年生の夏から、入門編を飛ばして標準編の全20回を一気に解き切りました。その子にとって、この教材は歯ごたえがあり、やり甲斐のある負荷だったと聞いています(四谷大塚とサピックスで、場合の数の扱いがどう違うかについては、こちらの記事に書いています)。

飛び級で、4年生のうちにこの標準編を終えるということは、その水準の負荷に、一年以上早く挑むということです。どうぞ、実際の問題をご覧ください。お子さんが「面白そうだ」と目を輝かせるか、「まだ早い」と感じるか。その反応そのものが、いま飛び級に進むべきかどうかの、いちばん確かな答えになります。

※場合の数 標準第20回 / 図形 標準H 第10回・第20回

サピックスを基準に見た、夏までの行程

飛び級が実際にどれほどの速さなのか。難関校対策の確かな基準として、サピックスを物差しに置いて、お話しします。

受験算数OSの本体カリキュラムは、新5年生の2月から始まり、その年の夏に「比と割合」へたどり着くことを軸に組まれています。飛び級のお子さんは、この本体カリキュラムを、しばらくの間、通常の2倍の速さで進んでいきます。

ただし、ここに一つ工夫があります。「比と割合」は、7月より前に前倒しはしません。比は、抽象的で、大切な要だからです。そこで、比の手前にある夏前後の単元を先に片づけておき、7月に「比と割合」、そして本来は冬に置かれている「平面図形と比」までを、一気に学びます。これで、比を使うための土台が、夏のうちに完成します。

その土台ができるからこそ、8月に、場合の数と図形の標準編を、後半の第20回まで仕上げることができます。4年生の段階で第10回まで、と区切っておいた標準編の後半は、比が揃うこの夏に、無理なく続きへ入れるのです。

こうして、飛び級のお子さんは、5年生の夏を終える頃には、場合の数と図形の標準編を最後までやり切った状態に立ちます。サピックスがかなりの時間をかけて到達する地点に、それよりずっと短い時間でたどり着く——これが、飛び級の速さの正体です(本体カリキュラムが、どのような順番でこの設計を実現しているかは、カリキュラムのページに詳しく書いています)。

なぜ、飛び級生は「5年後半の壁」を通らずに済むのか

中学受験の算数は、5年生の後半がきつい、とよく言われます。これには、はっきりした理由があります。

多くのカリキュラムでは、先に「割合」を習い、5年生の後半になってから、新たに「比」が入ってきます。そして、毎週のように単元が変わっていく。このとき、子どもたちは3つのことで混乱します。割合と比が頭の中で混ざること。平面図形にまで比が出てきて負担が増えること。そして、似ているような似ていないような単元が毎週入れ替わり、追いつくだけで精一杯になること。この3つが重なって、5年後半の壁ができます。

受験算数OSは、この壁を、設計の段階で先回りして低くしています。

まず、比を使えない時期には、比を使って解ける問題をそもそも扱いません。だから、割合と比が頭の中で混ざりません。次に、平面図形と比は、底辺と高さを決めて公式どおりに解くという、素直な方針に絞り、しかも夏のうちに終わらせます。だから、後半に平面図形と比が重くのしかかりません。そして、さまざまな単元を通じて「表」を軸に据えることで、単元が変わっても、「表を少し加工する」という共通の感覚でつないでいけます。だから、毎週の単元チェンジが、ばらばらの丸暗記ではなく、地続きの作業になります。

この設計のおかげで、飛び級のお子さんは、世間の多くの受験生が5年後半に消耗するその場所を、そもそも通らずに済みます。

負荷は、なくなりません。向き先が、変わるだけです

誤解のないように申し添えます。飛び級は、楽になる魔法ではありません。負荷は、しっかりかかります。

ただ、その負荷の向き先が違うのです。夏までに場合の数・図形・比を仕上げた飛び級のお子さんは、そこから通常の速さに戻り、残る濃い単元——立体図形、図形の移動、容積——に、じっくりと向き合っていきます。前半を速く駆けて生まれた余裕を、この難しい単元に振り向けるわけです。

かかる負担の重さは、一般的な難関校対策と、そう変わらないかもしれません。けれど、同じ時期に向き合っている単元が違います。多くの受験生が割合と比の混乱と格闘しているとき、飛び級のお子さんは、その混乱を設計で回避し終えて、一段先の景色を見ている。この「同じ大変さでも、立っている場所が違う」ことこそ、飛び級で得られる、いちばん大きなものです。

この後半戦——9月以降、立体・移動・容積とどう向き合うか——
の詳しい話は、別のページでお話しします

まず、お子さんに問題を見せてください

もう一度お伝えします。飛び級は、すべてのお子さんに必要な道ではありません。多くのお子さんは、4年生で入門をしっかり固め、5年生からゆったりと本体カリキュラムと標準編に進む——それで、十分に力はつきます。

でも、もしお子さんが、先ほどのサンプルを見て目を輝かせたなら。あるいは、あなた自身が「この子なら、いけるかもしれない」と感じたなら。その直感は、試してみる価値があります。合わないと感じれば、いつでも、ゆったりした道に戻れます。まずは一歩、踏み出してみてください。

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