中学受験算数、模試の見直しは「正解した問題」から

この記事は約 12 分で読めます

模試の結果が返ってきたら、まず何をしますか。

多くのご家庭では、間違えた問題のやり直しから始めると思います。解説を読んで、解き方を確認して、もう一度解く。親御さんも、そこにいちばん時間をかけてほしいと考えているのではないでしょうか。

その背景には、こんなイメージがあるように思います。

「今回解けなかった問題が、次に出たときに解けるようになる。それが、偏差値が上がるということだ」

気持ちはよくわかります。けれど、このイメージには、大きな落とし穴があります。

そして、模試の見直しで本当に効果が大きいのは、間違えた問題ではありません。

正解したのに、書き方がひどかった問題を、整えて書き直すことです。

「次に出たら解ける」は、典型題の話

「解けなかった問題が、次に出たら解ける」という考え方は、典型題なら成り立ちます。典型題は、形を少し変えて、何度も出てくるからです。典型題で間違えた問題は、きちんと直しておく価値があります。

けれど、模試で差がつくのは、典型題ではない問題です。初めて見る形の問題、少し捻られた問題。そういう問題が、同じ形で次の模試に出ることは、まずありません。

解説を読んで「なるほど」と理解しても、その理解は、その1問のためのものになりがちです。次に形を変えて出てきたとき、その解説が役に立つかといえば、なかなかそうはいきません。

それなのに、「間違い直しこそが大事」と思い込んでいるために、いちばん時間と力を注ぐ場所が、いちばん効果の小さい場所になっている。これが、多くのご家庭で起きていることです。

正解していれば、何事もなかったことになる

では、正解した問題はどうでしょうか。

6年生の模試の答案を見せてもらうと、点数より先に、目に入ってくるものがあります。書き方です。

数字が余白のあちこちに散らばっている。筆算が問題用紙の隅に押し込まれていて、どの数が何を表しているのか、本人にもわからない。式があっても機能的ではなく、式の答えがなにを表しているのか分からない。

正直に言って、ひどい書き方の答案が少なくありません。

面積図や線分図、平面図形のように、書き方がある程度決まっている問題は、まだ整っています。乱れが目立つのは、書き方が決まっていない問題です。とくに、割合の問題の書き方は、ひどいことが多い。

子どもを責めたいのではありません。時間が足りなくて、慌てていたのかもしれません。余白が狭くて、書く場所がなかったのかもしれません。模試という場で、そうなってしまう事情は、よくわかります。

ただ、ひどい書き方をしていても、答えが合っていれば丸がつきます。丸がつけば、その問題は「できた問題」として、何事もなかったかのように通り過ぎていきます。見直しの対象にすら、なりません。

けれど、その正解は、たまたま届いた正解かもしれません。

数字が散らばった答案は、条件を整理しきれないまま、なんとか答えにたどり着いた跡であることが多いのです。条件が少し変わったら、少し捻られたら、手が止まってしまうかもしれない。答案の書き方は、そのことを正直に映しています。

たとえば、割合の問題で

こんな問題があったとします。

ある品物に、原価の3割の利益を見込んで定価をつけましたが、売れなかったので、定価の2割引きで売りました。このときの利益は40円でした。この品物の原価は何円ですか。

よく見かける答案は、こんな様子です。

余白のあちこちに「1.3」「0.8」「1.04」「0.04」という数字が散らばっていて、隅のほうに 1.3×0.8 の筆算と、40÷0.04 の筆算がある。答えの欄には「1000円」。

答えは合っています。丸がつきます。

けれど、どの数が原価で、どの数が定価なのか、答案のどこにも書いてありません。1.04が何を表しているのかも、本人が頭の中で覚えているだけです。値引きや仕入れの条件がもう一段階増えたら、頭の中だけでは追いきれなくなります。

同じ問題を、整えて書くと、たとえばこうなります。

割合金額
原価1?
定価1×1.3=1.3
売価1.3×0.8=1.04
利益1.04-1=0.0440円

原価=40÷0.04=1000円

書いている数は、ほとんど同じです。違うのは、それぞれの数が何を表しているのかが、表の中に書いてあることです。原価・定価・売価・利益が縦に並び、割合と金額が横に並ぶ。いま何がわかっていて、何を求めればいいのかが、ひと目で見えます。条件が一つ増えても、行を一つ足せば済みます。

同じ正解でも、中身はまったく違う

テストの点数は、丸かバツか、はっきり分かれます。けれど、子どもの中にある理解は、そんなふうにきれいには分かれてくれません。

同じ正解でも、

  • 条件を整理して、見通しを持って解いた正解
  • あちこちに数字を書き、試しているうちに届いた正解

この二つは、中身がまったく違います。

私は、「100点満点のテストで、150点を目指す」という言い方をよくします。採点で150点がつくわけではありません。「この問題だから解けた」というぎりぎりの100点ではなく、「もう少し条件が複雑になっても、対応できたはずだ」という、余裕のある100点のことです。

散らばった書き方での正解は、ぎりぎりの100点です。整えて書けた正解が、150点に近づいていきます。

なぜ、書き直しのほうが効くのか

間違えた問題の解説を読むことは、他の人が整理した考え方を受け取る作業です。わかった気にはなりますが、自分の手で整理したわけではありません。しかも、典型題でなければ、その1問の理解が次に生きる場面は限られます。

一方、正解した問題は、すでに自分の頭で一度たどり着いた問題です。その道筋を、自分の手で整えて書き直す。これは、自分の考えを、自分で整理し直す作業です。理解の土台がすでにあるので、無理なく、確実に積み上がっていきます。

そして、書き直していると、子どもの中に、ある気づきが生まれることがあります。

「最初から表に書いておけば、こんなに迷わなかった」 「ここで比を使えば、計算がずっと楽だった」 「この数を先に求めておけば、次がすぐに見えた」

この「こう書けば、もっとスムーズにできた」という発見こそが、学力アップのいちばん大切な要素です。

この発見は、その1問だけのものではありません。次に似た問題、あるいは初めて見る問題に出会ったとき、「最初にこう書けばいい」という見通しとして生きてきます。解き方を覚えたのではなく、書き方と考え方の型が、自分の中にできていくのです。

解けなかった難問の解説を読み込むより、解けた問題を整えて書き直すほうが、よほど力になる。私はそう考えています。

家での見直し、こう変えてみてください

模試が返ってきたら、次の順番で見直してみてください。

  1. 正解しているけれど、書き方が整っていなかった問題に、印をつける。 間違えた問題よりも先に、ここを探します。
  2. 印をつけた問題を、ノートや白い紙に、最初から整えて書き直す。 狭い余白ではなく、広いところで、条件を表や図に整理しながら解きます。正解していても、やり直します。
  3. 「こう書けばよかった」を、ひとことメモしておく。 次の模試の前に読み返せば、それがそのまま、自分だけの書き方の手引きになります。
  4. 間違えた問題は、典型題を中心に直す。 典型題ではない難問の解説を、時間をかけて読み込む必要はありません。

書き直しは、2問か3問で十分です。盛りすぎると続きませんし、ここは量より質の作業です。

「もう解けた問題を、もう一度やるのは時間の無駄では」と思われるかもしれません。同じ書き方をなぞるだけなら、確かにそうです。けれど、書き方を変えるために解き直すなら、1問から得られるものは何倍にもなります。

テスト中から、整えて書く

家での書き直しを続けていくと、次は、テスト中から整えて書けるようになっていきます。

「時間がないのに、そんな余裕はない」と思われるかもしれません。けれど、整えて書くことは、時間を使うことではありません。

条件を表や図に整えて書くと、いま何がわかっていて、次に何を求めればいいかが、目に見える形になります。頭の中だけで考え込む時間が減ります。数字の位がそろっていれば、計算ミスも、写し間違いも起きにくくなります。見直しをするときも、どこを確かめればいいかがすぐにわかります。

散らばった書き方のほうが、実は時間がかかっていることが多いのです。

余白が狭い問題用紙でも、書く順番と場所を決めておけば、整えて書くことはできます。問題ごとに書く場所を区切る。上から下へ、順番に書いていく。それだけでも、答案はずいぶん変わります。

悪い癖は、早めに直すほど効果が大きい

ここまで6年生の模試を例にお話ししてきましたが、これは5年生にも、そのまま当てはまります。5年生の模試や週テストでも、正解した問題の書き方を見直す価値は同じです。

むしろ、5年生のうちに始めたほうが効果は大きいと私は考えています。書き方の癖は、長く続けるほど手になじみ、直すのに時間がかかるようになります。割合を学び始めたばかりの時期なら、整えて書く書き方も、そのまま自然に身につきます。悪い癖は、早めに直したほうがいいのです。

丸のついた問題に、次の伸びしろがある

模試の答案は、点数を知るためだけのものではありません。お子さんがどう考え、どこで迷ったのかが、そのまま残っている、いちばんの教材です。

次の模試が返ってきたら、間違えた問題を開く前に、丸のついた問題を見てみてください。そこに、次の伸びしろが眠っています。


LINEで先生に聞ける算数教材
対話式算数HOP

進度は公立小学校と同じ、深度は受験算数のまま。理解しながら進められる「少しの負荷」で、受験算数を学ぶ教材です。まずは1テーマ分を、登録なしで読んでみてください。

TOP