覚える算数を肯定する大人

クルマの運転

コロナ禍は各種イベントが中止になったり、県外に出るなムードが高まったりして移動が減り、飲食店が時短営業をしたり、そもそもマスク会食というものは煩わしいので、外食の機会も減りました。

とは言いましても、仕事だけでは冴えがなくなり(いまが冴えているという意味ではありませんが)、気分転換に趣味に打ち込みたいと思っていまして、ここ数年、10年ぶりくらいにクルマに対する熱が上がっています。

クルマと言ってもいろいろなジャンルがあり、私はサーキット走行&ドラテク(※ドライビングテクニック)に興味があります。

ドラテクで、あまりクルマに興味が無い人はピンとこないかもしれませんが、ブレーキ残しというテクニックがあります。

ブレーキを軽く踏んだままコーナーに入ると、曲がりやすくなって、トータルでコーナーを速く走れるというテクニックです。

ところが、プロドライバーはブレーキ残しを推奨する人と、ブレーキは残すなといって否定する人がいます。

どちらが優秀なドライバーというのは関係なく、しかも、実際の動画を見ると、ほぼ同じ運転をしています。

つまり、ほとんど同じ動きをしているのに、表現が180度異なるというわけです。

ブレーキを残さない人に「残すように」という言い方をする人と、残しすぎてスムーズに走れない人に「残しちゃダメ」という言い方をする違いです。

受け手によって言葉が違うのは当然ですが、これを文字にして見ると、バックボーンが無い状態だと、間違った運転になる恐れがあります。

 

覚える算数の公式の例

前振りが長くなりましたが、本題の覚える算数も似ています。

まず、私の立場は、覚える算数否定派です。

今回、ブログを書いたのは、Twitterなどで、ちらほら「覚えるのは当たり前」というコメントを見るからです。

特に東大出身者や、子供が東大に進学したという保護者がそのコメントを出すと、説得力があるのではないでしょうか。

ある人は覚える算数はダメと言い、ある人は覚えるのは当たり前と言うのを並べると、判断に迷うと思います。

しかし、上記のブレーキ残しと同じように、ほぼ同じです。

 

私が、覚える算数の代表的なものとして、よく5つほど例を挙げますが、まず、その1つの「選ぶ問題」です。

例えば、10人から3人を選ぶ場合、コンビネーションを使って、10C3=(10×9×8)/(3×2×1)という公式を丸暗記して、それに問題の数字を当てはめて答えを求めるものを覚える算数と呼んでいます。

「どうして分子は10×9×8なの?」「どうして分母は3×2×1なの?」と聞いて、頑張って答えようとする姿勢にならず、「覚えただけです」「理由は分かりません」と答える子に、覚える算数になっているねと言います。

 

覚える算数ではない捉え方としては、まず、10人から3人を選んで並べる場合は、1人目は10通り、2人目は9通り、3人目は8通りで、10×9×8=720通りになります。

3人を並べると、並べ方は3×2×1=6通りになりますが、選ぶだけの場合は、この6通りを1通りと数えます。

つまり、選ぶだけのときよりも、並べる場合は6倍になっています。

720÷6=120で求められるというわけです。

こういった流れを理解して説明できたら、それは、覚えていたとしても覚える算数ではありません。

 

覚える算数の解法の例

食塩水の典型題で、食塩水Aは「10%・200g」、食塩水Bは「5%・300g」で、それぞれ同量を取り出して、交換して入れたら同じ濃度になったという問題があります。

何g取り出すかを求めます。

これは解法が3パターンありますが、私は比の解法を好んでいて、AとBは200:300=2:3なので、200×3/5=120g交換したとあっさり求めることができます。

濃度も使う必要がありません。

これを、AとBの食塩水の比は200:300=2:3だから、Bは3/5で、Aの200gに、この3/5をかけたら答えが出ると覚えて解いていたらゾッとします。

しかし、この問題は典型題なので、解き方を知っておいた方が良いです。

この問題を経験して、考え方を理解して、結局は、200×3/5の計算式を身につけて求めることを望んでいます。

つまり、生徒さんは、ゾッとする覚える算数でも、模範的な理解する算数でも、同じ行動を取るわけです。

どうしてそうするのか理解しているかしていないかの違いだけです。

 

覚える算数肯定派と否定派

繰り返しになりますが、10人から3人を選ぶ場合は、まず、10人から3人を並べる場合は720通り、選ぶだけのときは6通り重複するから、720÷6=120という流れで解きます。

これを生徒さんに聞いたときに、720は出てこない、6で割れないとなると、全く覚えていないんだねとなります。

また、食塩水の場合は上記の200×3/5ができなければ、解き方を知らないんだねとなります。

覚える算数を否定していますが、覚えないことを推奨しているのではありません。

覚え方の質について言及しているのです。

どんどん解き方を覚えるのは当然ですが、その言葉を使うと、式だけ覚えればいいと捉えられがちなので、覚えるという言葉を使わずに「身につける」とか「経験したことはできるように」という、少し遠回しの表現を使っています。

 

コンビネーションを使うことは、覚える算数肯定派の人は、公式丸暗記でも良いと思うかもしれませんが、どうして分子が10×9×8で、分母が3×2×1になるかは説明していると思いますし、できれば理解して欲しいと思っているはずです。

食塩水ならば、機械的に200×3/5で答えていたことが分かったら、私と同様にゾッとすると思います。

 

結局は、ほぼ同じことを言っていると思いますが、強いて言えば、「理解できていないならば、できなくてもいい」と考えるか、「理解できなくても、点数は取って欲しい」と考えるかの違いだと思います。

私は前者ですが、無理に覚えることによって、悪い学習の癖に繋がることを恐れ、後者は、点数が取れないことによる弊害を恐れています。

また、後者の立場としても、とりあえず覚えるだけでも、徐々にどうしてそういう式になるのか理解して欲しいと思っていると思います。

「覚えなくても良い」という姿勢を肯定している人はいないと思います。

 

理解することが理想ですが

覚える算数を否定して、すべて理解しようといっても、そうは簡単には進められません。

それが簡単ならば、覚える算数肯定派はいなくなると思います。

個人的には、算数の場合、円すいや角すいの体積以外は公式の理由が言えることがベストだと思いますが、分数のわり算や円の面積ならば、理解できなくても仕方が無いと思っています。

人によって、そのさじ加減は大きく異なるかもしれません。

  • 理解できないから、この解法は覚えた方がいい
  • 理解できないから、この解法は使わない方がいい

このどちらかです。

その扱いに個人差があると思います。

円の面積なら、まさかこの解法は使わない方がいいとはなりませんが、上記の食塩水の問題ならば、この解法を使わずに、違った解法で解くことを勧めます。

覚える算数肯定派と否定派で180度考え方が違っているわけではなく、覚えることのプラス面とマイナス面の捉え方、理解できないときの対処法が、少し異なるということだと思います。

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