割合は整数から始める

一般的な進学塾では5年生で割合を学習します。

塾によっては4年生で割合を学習しているかもしれません。

分数の単元で、割合の問題が出てきているかもしれません。

 

割合は、全体を1にして分数で解くのが一般的です。

メリットは、いつでも全体を1にするという単純さです。

デメリットは、分数でイメージしにくいです。

「AはBの3/4で、Aの2/7とBの1/3の差が10のとき、Aはいくつですか」なんて問題を見たら、とてもイメージしにくいと思います。

問題によっては、全体を1にするのではなく、兄を1にしたり、本の値段を1にしたりするので、メリットは、決まった問題しか、その恩恵はありません。

 

全体を1にしないとしたら、分数にならず整数で解けるように、全体を最小公倍数にするなど、何かを決めていくことになります。

メリットは整数で計算しやすいことです。

デメリットは、全体を1にするという単純さがないことです。

 

そして、割合を学習してからしばらくたちましたら、比を学習します。

比というのは整数で考えることです。

その後、「割合と比」の総合問題を学習します。

割合と比というと、割合と比の融合問題に聞こえますが、そういうことではなく、割合の問題を比(整数)で解くことになります。

つまり、最初に割合を学習しても、比を学習するとリセットされて、比で解くようになります。

最初に割合を学習することは無駄?とつい思ってしまいそうですが、算数講師の中には、それがないと割合と比がスムーズに進まないという信念を持っている講師もいます。

 

かなり合理的な私はそのあたりはすべて実験済みです。

実験とストレートにいうと聞こえは悪いですが、授業を実験の場として、実験の連続でないと進歩しません。

私の結論は、

割合と比を、比を意識しないで整数で学習

少し慣れたら比を意識した問題

かなり慣れてから、分数もときどき使う

という流れが最も効率が良く、効果的な展開になりました。

 

導入段階で、分数を使う問題は、ボールの跳ね上がり問題くらいです。

2/5跳ね上がるボールを、初め□mの高さから落とし、3回目に40㎝跳ね上がるというような問題です。

初めに落とした高さは、40×5/2×5/2×5/2=625㎝=6.25mとなります。

かなり簡単な問題ですが、割合と比をかなり習熟できた段階で出てきます。

大手塾だと、割合の第1回目に登場すると思います。

 

割合(分数)→比(整数)→割合と比(整数)」という大手塾のパターンで上手くいく生徒さんもいますが、それで上手くいかなかった生徒さんが、私の検証結果の「割合と比(整数)→比(整数)」で上達する姿をよく見てきました。

私の検証結果で上手くいかずに、大手塾のパターンで上手くいったという話は、私の元には届いたことがありません。

 

そんなに整数っていいの?と思われる方は、この問題でご確認願います。

100円玉と500円玉が合計170枚あり、それぞれの金額の比は3:2のとき、100円玉は何枚あるかという問題です。

分数に慣れていると、無意味な計算をしでかす可能性が高いです。

整数で解く場合は、これは整数にならないと考えます。

整数でイメージする習慣がついているので、そういうことが判断できます。

その場合は、自分でどんどん決めて良いです。

比なんていうものは、自分で決めてなんぼのものです。

難しい問題になるほど吊しで使うことは減ります。

3:2を3000円と2000円にしようかな?と考えます。

そのとき、100円玉は30枚で、500円玉は4枚で、合計34枚になります。

実際は170枚なので、34枚の5倍です。

100円玉も5倍なので、答えは150枚となります。

 

分数を使うとすると、枚数の比は、3/100:2/500=15:2と一発で求められます。

これを見て、分数の方が良い!と思われる方は、算数が得意な方だと思います。

私も自分で答えを出すときは、いまの分数で求めます。

ゆくゆくはこの問題はいまのような分数で解いた方が速くて良いのですが、導入段階でそれを求めるのではなく、イメージが湧くように、3000円と2000円に決めた方が良いというご提案です。

 

「大手塾が、分数から始めるのには意味がある」というような考え方は、日本人は好むと思います。

そのような考え方が間違えているわけではありませんが、大手塾関係なく、「整数から入った方がお得では?」と思われる方は、大手塾の教材では無理ですし、市販の教材でそういう方針のものを探すのは大変だと思います。

小5対話式算数第52~59話の8話を学習することを是非ご検討願います。