解き方を覚えて、解ければいいのか?

塾講師は、士業ではありませんので、講師になるときに資格試験などはありません。

生徒さんの前に立ち、教え始めた日からプロ講師です。

学生バイトでも、お金をもらっている以上、プロ講師と言ってもいいと思います。

 

資格試験の勉強をしたわけではないので、教え方は統一されず、みな、我流です。

大手塾の教材の解説を参考にして、あるいは先輩講師のアドバイスを参考にして、そこから経験を元に徐々に教え方を磨いていきます。

ベテランとか講師歴という教えるキャリアよりも、思想の方が重要です。

「出来ない生徒は、どんな教え方をしても身につかない」

残念ながらこんな考え方を持っている塾講師もいますが、これも思想です。

 

算数の思想の違いで大きなものと言えば、「算数は暗記科目である」「算数は理解する科目である」というものです。

「算数は暗記科目である」と強く思っている講師は、意味が分からなくても、とにかく解き方を覚えて正解にして点数がとれれば、どんどん自信がついて、上達すると考えがちです。

前職に入社したとき、当時のその塾のトップのベテラン講師は、次々と解きやすくなるためのアイデアを教え、「意味は分からなくても、とりあえず、こう書いて解きなさい」と指示していました。

このような考え方が正解か不正解は分かりませんが、現時点では、私はこの考え方ではありません。

解き方を覚えて正解にしても応用が利かず、発展的な学習になったら失速する可能性大だと考えています。

 

約数の典型題で「ある数で40を割っても70を割っても88を割っても割り切れずあまりが等しくなるある数をすべて求めなさい」という問題があります。

差なら割れるので、30と18を割れる数の1、2、3、6のうち、40も70も88も割り切れない3と6が正解です。

対話式算数では、これは小6に載せています。

大手塾ではたいてい小5の前半に載せるので、対話式算数より1年以上早いです。

 

さすが、大手塾!と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、「線分図を3本書いて、それぞれの差の部分の公約数を求めればいい」という解き方だけ教わって、それを暗記している生徒さんが多いと思います。

大手塾で最近学習したという方は、お確かめいただきますと、かなり高い確率でそうなっていると思います。

どうして線分図をかくかというと、理由が分かっていなくてもマニュアル化しているおかげで解けるからです。

 

小6対話式算数では、基本的に線分図では説明しません。

イメージしやすいリンゴ40個、ナシ70個、ミカン88個にして、まず、リンゴ40個、ナシ40個、ミカン40個を配り、その時点で、3種類の果物は同じあまりになり、ナシやミカンはまだ残っているので配りますが、これ以上あまりに変化はないので、ナシ30個とミカン30個はぴったり配ることができ、さらにミカン18個はぴったり配ることができます。

つまり、30個や18個なら配れる人数であるということを言葉で丁寧に説明します。

人数を実際に6人にして説明していくと、より分かりやすくなります。

しかし、言葉での説明では新小5では難しいので、小6にまわしたというわけです。

「線分図を使えば、新小5でも解けるよ」と教えてくれる講師もいるかもしれませんが、線分図でマニュアル化して解けるようになっても発展しないと思っていますので、線分図をかくくらいなら、新小5では扱わないというだけです。

 

この問題は、分数の約分にも通じる考え方で、約分できるかどうかは、分母と分子の差から考えていくときの考え方と同じです。

これを扱うときは、分数の約分まで話を広げていきたいので、小6対話式算数では、その部分まで触れています。

線分図をかいて、この問題だけ解けるようにするという考え方は同意しがたいです。

 

なぜ、大手塾では、この問題を小5で扱うかというと、翌週の確認テストに出題すれば正解に出来る子が多いからです。

どうしてこの解き方で解けるかを理解していようが、いまいが、解ければ良いという方針です。

 

大手塾に通われている方で、大手塾のその方針に首を傾げている方は多いのではないでしょうか?

とても苦戦している問題があるという場合は、解き方を覚えれば良いという大手塾に対して、理解させようとしているから噛み合わないことが原因だと思います。

大手塾の方針が中学受験の勉強として正しいというわけではありません。

大手塾のロジックもかなり間違えています。

応用力が付かないのは、大手塾の方針が誤っているといってもいい場合もあります。

対話式算数をご利用のお客様に継続していただき、お褒めいただいておりますのは、思想が、対話式算数の方が受け入れやすいからだと思います。

 

「どうして、この解き方で解けるの?」

とお子様に頻繁に聞いてみましょう。

答えられない場合は、その問題を扱うのは時期尚早の可能性が高いです。

テキストに出てきたからやるというのは、正解なようで、不正解だと思います。

そういう問題を後回しにしてもメリットはありますが、デメリットは、週テストで点数がとれないくらいです。

週テスト重視派の方に、こちらの意見を押しつけることはありませんが、効果的な学習を求めています方は、意味が分からずに解いている問題をバッサリ切ることにしましたら、負担が減り、勉強しやすくなります。

塾のペースに合わせていくことも必要ですが、ペースに合わせようと頑張りすぎて、逆効果になる恐れもあります。

理解重視で行くことをお勧めいたします。

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