- 2024年2月28日
典型的な割合と比の問題を題材に説明していきます。
周りの長さが等しい2つの長方形AとBがあり、Aは縦と横の長さの比は3:4,Bは縦と横の長さの比は3:2、このときAとBの面積の比を求めなさい。
初めて問題を解くと、多くの生徒さんが間違えます。
この問題は、まだ割合と比の仕組みが十分に分かっていない時期に登場するので、「これまで比を実際の数字のように使って求めたので、これも同じかな?」と考えて、公式通りにAを3×4=12,Bを3×2=6として、12:6=2:1とするものです。
もちろん間違えているのですが、どうしてこれではダメなのでしょう?
比の習熟が進んでいたら「周りの長さが等しいという条件があるよ」の一言のヒントで十分かもしれません。
比では、Aの周りは14、Bの周りは10なので、それを最小公倍数の70にしようと考えて、Aは5倍で、縦15、横20、Bは7倍で、縦21、横14で、面積の比は300:294=50:49となります。
しかし、導入段階でこの説明をしたら、「どうしてこれなら良いの?」という感想になると思います。
大手塾の解説は、このくらいしか書いていません。
「どうしてこれなら良いの?」という疑問は「比はこれでいいんだよ」と答えになっていない回答で終わりがちです。
これでは覚える算数にならない方が不思議です。
よく分からなくても、とにかくこう解けば、正解になって良い成績が取れるというわけですので。
受験勉強はレベルが高いので、このような覚える算数になることを助長しています。
対話式算数は、生徒に、元気な「茶くま君」と優秀で冷静な「シロ君」がいます。
いまの問題であれば、茶くま君が「どうして12:6じゃダメなんですか?」と言います。
シロ君が「Aは縦と横が3:4だけど、6と8かもしれないからかな?」と言います。
茶くま君が「そうしたら48:6=8:1に変わっちゃうな」と、12:6ではいけないことに気がつきます。
このあたりで先生が助け船を出して「周りの長さが等しい長方形だよ」と言います。
茶くま君が「比は勝手に決めていいから、長さを等しくするのかな?」と言って、ぐっと答えに近づいていきます。
シロ君が「Aの縦と横の和が7で周りが14で、Bの縦と横の和が5で周りが10だから、最小公倍数の70にすればいいかもね」と模範解答に近いことを言います。
これで解決したら物足りませんので、ここから、茶くま君が「周りの長さが70のときと、それ以外のときで、答えが変わるんじゃない?」と疑問を投げかけます。
先生が「周りの長さが70のときの面積を求めてごらん」「そのあとで、周りの長さが140だったら、どうなるか計算してごらん」と言います。
塾の授業ではこんな余裕がないような気がします。
周りが70のときはAの縦と横が15と20で、Bの縦と横が14と21だったのが、周りが140になったら、Aの縦と横が30と40で、Bの縦と横が28と42になります。
周りが70のときは、面積は300:294で、周りが140のときは、面積は1200:1176になります。
ここで茶くま君が「ほら、答えが変わった!」と言います。
シロ君は「300:294も1200:1176も50:49で同じになるよ」と返します。
茶くま君が「周りの長さを同じにしていれば、どんな数字でも、比にしたら結局は変わらないんだね」と結論に気がつきます。
先生が「今回は周りの長さが同じという条件で、それを最小公倍数にすると上手く行ったけど、大切なことは、条件から外れないように、比を自由な長さに決めること」と言って締めます。
この問題は、Aの縦と横の3:4を6と8にすると答えが変わるから「3×4」と「2×3」は意味がないこと、周りの長さは70でも140でも答えが変わらないことを伝えたい問題です。
対話式算数では、「こうやれば解けますよ」という解説ではなく、「こうやったらこういう理由でできません」という記述を増やすことで、正しい論理を身につけて欲しいと思っています。