同じ問題集を何回もやれば力が付くのか

先日、書いたブログ「質問したらできるようになるのか」もそうでしたが、今回もTwitterでこれを書こうというものを見かけました。

これからもTwitterのネタを題材に書いていくことが多くなると思います。

 

Twitterで見たのは、東大受験生で、問題集をどういう使い方をしたら、合格率がどうなったかをデータにしたものです。

サンプル数は多くなかったのですが、そのデータでは、同じ問題集を何回もやると、合格率が高くなり、1回やった問題集を終わりにして次の問題集に取り組んだ人は合格率が低くなっていました。

これを見ると、中学受験も1つの問題集を3~5回やりこんだ方が難関中学に受かるのでは?と思ってもおかしくはありません。

 

実は、私もしっかりデータ取りできています。

2007年くらいまで、同じ問題を何回も何回も課題にするスタイルで、かなり良い入試結果になり、模試も高偏差値が出ました。

ところが、その後、それでは結果が出ないようになり、指導スタイルを変えました。

スカイプ指導も試行錯誤しながらやっていますが、典型題の練習だけでは、難関中の合格は厳しかったです。

過去、算数だけが弱いからといって、6年秋から指導のご依頼がありました。

まず、典型題ができていないと、それを固めます。

時間的にそれだけで終わってしまうと、偏差値は上がったとしても、第一志望合格とはなりませんでした。

中学入試に関しては、同じ問題を繰り返し学習しても、難関中には受からないと結論を出しています。

典型題をくり返しても結果が出なくなりましたし、典型題以外をくり返したらますます結果が出ないのは火を見るより明らかだと思います。

 

理由はそれほど難しいものではありません。

大学受験は、東大といえども、高校までに学習する数学が基盤になって、それを発展した問題です。

基盤を固めることで、発展に対応できるということは十分理解できます。

私も、昔話ですが、大学受験の勉強のときは、数学は赤チャートともう1冊の問題集だけ取り組みました。

基盤を固めていたら中学受験も対応できると思い、2007年頃まで上手くいっていたのは、自分のその経験からです。

 

ところが、中学受験で、その戦略をいま取り入れるのは、クレイジーだと思っています。

中学受験は、大学受験と異なり、基盤があってないようなものだからです。

東大の入試問題のパクりのような問題が出ることもありますし、いきなり球の体積や表面積が出ることもありますし、三平方の定理を使わないと恐ろしい難問だけど、三平方の定理を使えばあっさり出来る問題もあります。

「円すいの体積は底面積×高さ÷3で求められます」などと一文を入れておけば、学習指導要領の範囲外でも出題できます。

変幻自在というか、要するに、ルールがないので、各中学校の先生が自由に問題をつくれるのです。

ざっくり言えば、受験勉強をやってきた人なら「よく考えれば出来る問題」です。

 

何をたくさん反復すれば、そういう問題を解けるのでしょうか。

その答えを自分で出せなくなったので、そこからは、典型題50%、初見の問題50%を基本として、あとは、生徒さんの状況を見て、その比率を上下させて対応するようにしました。

理想を言えば、5年生までは典型題の深いところまでを突いて、新6年生から良質ないろいろな問題に接することがベストだと思います。

5年生までは、典型題の深いところが中心になりますが、場合の数、平面図形をバランス良く学習することも大切です。

典型題が炭水化物で、場合の数がたんぱく質で、平面図形が脂質のように捉えても、大きなずれはないと思います。

四谷大塚では5年生までも、応用演習問題集などで、初見の入試問題を取り組むことができますが、それは時期尚早で、場合の数や平面図形に強くなった方が良いと個人的には思います。

それも数例ですが、家庭教師で実証済みです。

 

中学入試で問われる三大要素は「緻密な作業」「論理的に考える力」「糸口を発見する力」です。

反復学習はこの三大要素を鍛えられにくいです。

典型題を反射的にロボットのように解いていくのならいいですが、その力が突出しても意味がありません。

もちろん論理的に考えるにしても糸口を発見するにしても、基本的な算数の解き方が身についていないと、考えが進められません。

その意味で典型題不要というつもりはありません。

反復して典型題を100%マスターしても、難関中に合格する力が付かないということをお伝えしているに過ぎません。

大学受験と中学受験で共通の作戦もありますが、なんでもかんでも同じ作戦というのは難しいと思います。

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