- 2018年5月19日
家で勉強はしているけど、苦手にしているというご相談をよく受けます。
言葉にすると「やっていないわけではないんですけど苦手」と控え目な表現になることが多いですが、勉強量と成績が比例していない現象が起きているのだろうと思います。
入試報告会では、勉強をしていっても得点がまっすぐに上がるのではなく、上がったり水平になったりすると言っていました。
海岸段丘のようなグラフを見せてくれました。
具体的には、入塾してグングン上がり、やがてその成績上昇は止まり、しばらくして、また成績が上昇するということです。
塾側から「点数が上がらなくても我慢強く勉強しなさい」というメッセージです。
そのメッセージについては首を傾げる部分もありますが、成績上昇はそうなるケースもあります。
成績が上がっているということは、質の高い勉強ができていると考えると良いです。
例えば150点満点のテストだとして、入塾したときは50点しか取れないとします。
勉強の要領がつかめ、80点まで取れるようになったとします。
しかし80点より上はなかなか取れないとします。
この状態のときに、上記の「点数が上がらなくても我慢強く勉強しなさい」では、私はいけないと思っています。
「80点を取れる学習の質だから80点しか取れない」と考えた方がスッキリいきます。
努力を継続することによって、新たな学習法を考えたりして100点を取れる学習の質まで上がると、得点が100点に近づくというわけです。
しかし、課題となる学習はどんどん難しくなりますので、80点を取れる学習の質はいつでも同じなわけではありません。
学習の質の高めていっても、その高め方が緩やかだと成績は平行、学習の質がそのままだと成績がダウンする恐れがあります。
やっていないから成績がダウンするのではなく、学習の質がそのままだから相対的に学習の質が下がることになり、成績が下がると考えるとしっくりくるのではないでしょうか。
では、学習の質を高める方法を考えていきます。
レッスンとトレーニングを意識することが大切だと思います。
センスのある子ですと、レッスンとトレーニングが融合した学習が自然とできますが、苦手な科目は「いまはレッスン」、「いまはトレーニング」というように切り替える必要があります。
対話式算数は本編と練習問題を分けていますが、本編がレッスン、練習問題がトレーニングとなります。
通塾している場合は、塾での授業がレッスン、家で宿題などの復習をしているときはトレーニングになります。
中学受験では、サピックスの合格実績が良いことから復習主義の方が合格力を高められると言われます。
それだけで結論づけるのはやや無理がありますが、トレーニングが学習の質を高める鍵を握ります。
トレーニングが充実すれば、それにしたがってレッスンのときの吸収量や精度が上がります。
逆は成り立ちません。
集中してレッスンの吸収量を上げてもトレーニングが充実するわけではありません。
とは言いましてもトレーニングしやすくなることにはなりますので、そこでしっかり充実させれば上昇気流に乗ります。
結局はトレーニングが重要だと言えます。
授業で分からないところがあり、家で親に教わるところから始めますと、ほとんどレッスンだけの学習になる恐れがあります。
次の授業で行う復習テストに備え、直前だけ、ちょこちょこっと問題を解くだけでは圧倒的にトレーニング量が少ないです。
また、問題を解きながら、解説をたびたび見る場合もトレーニングではなくレッスンになっています。
それで「ハイ終わり!」では、なんとトレーニング量ゼロです。
これで成績が上がったら、逆に不思議です。
塾で重要なことを身につけてこないとしたら、家ですぐにトレーニングとはなりにくいです。
4年生や5年生でも今の時期は、家で親が教えていることが多いと思います。
その際は可能な限り、説明する言葉を少なくしてトレーニングの手伝いとなることを意識した方が良いです。
私の行っていますスカイプ指導では指導形態が何でもありなのですが、
生徒さんが問題をどんどん解いて、その説明をするという指導のときは、レッスン100%になります。
しかし、生徒さんが解きながら教えるという指導のときは、レッスン40%、トレーニング60%くらいのイメージです。
塾のフォローで親が教えるのならば、レッスンを20%くらいまで抑えないといけないと思います。
トレーニングは問題を解くだけではありません。
現在80点の子が問題を解いても80点を取れる学習の質です。
その質を上げるためには、問題を解く量を増やせば良いという単純なことの場合もありますが、そうでない場合もあります。
タイトルの「勉強しているのに成績が上がらない人へ」は、問題を解く量は十分だと思うけど、トレーニングが不足し、学習の質が低い状態を想定しています。
例え話を1つ挙げます。
以前、テレビで芸能人のつくる高級食材をふんだんに使ったラーメンと、プロのつくるインスタントラーメンはどっちが美味しいかという番組を見たことがあります。
結論はインスタントラーメンの勝ちでした。
高級食材のラーメンは1つ1つは美味しいけど味がバラバラで、インスタントラーメンは様々なテクニックを使って味を調和させていくので飽きのこないまとまった仕上がりになったそうです。
それが、学習の質が低いトレーニングと学習の質が高いトレーニングの違いのようなものです。
ラーメンを作るという行為は同じですが、作り方にとんでもない差があります。
ラーメン作りで、いきなり素人がプロに追いつくのは無理ですが、皿に盛り付けることはちょっと頑張ればプロに近くなります。
配置を工夫し、立体的に盛ったり、最後に色を加える意味で薬味を載せたりかけたりするだけで、見映えは別物になります。
勉強も同じで、解く過程を書くときに配置を工夫し、赤ペンと青ペンを使って、部分的に蛍光ペンを1色使って見映えの良いものに仕上げようとすると良いトレーニングになります。
よく、いろいろなペンを使うとそっちに気が行き、良くないと言われますが、それは論点が違います。
テキストの解説を写している作業で色を使っていくからいけないのです。
自分が考えて解いていくときに、補助線は赤色とか、斜線部分を移動させるときは、赤矢印で移動させるとか、マイルールを作ってカラフルにしていくことは決して悪いことではありません。
あるいは問題を読んでどこから考えていくかという始めの一歩の条件を蛍光ペンでひくというのも良いと思います。
月並みですが、時間を意識しても良いと思います。
1回目の復習の20%時間短縮を目標に2回目を解きます。
1回目と2回目は3日以上空けます。
すると、1回目を解くときの意識が変わります。
次に20%短縮するためにはどうすれば良いかと考えるので、自然と良いトレーニングになります。
それから難しい問題ほど、解き終わった後も大切です。
1分くらい、解いた過程を目で追ってなぞってみましょう。
解き方を覚えるように集中して目だけ使ってしっかり振り返ってみます。
問題を解いて答えを出すと、答えの数値からベストの解法を思いつく場合があります。
数の性質が分かっていると、答えの数値だけで瞬時でいろいろなことが見えてくることがありますが、算数が苦手な子だとそういうわけにはいかないと思います。
しかし1分くらい静かにいろいろ考えると、何も考えないよりもいろいろことがつかめるはずです。
「こうやって書いた方がスムーズに解けたな」という結論が出たのならスキルアップしたことになります。
たびたびブログで書いていますが、解くときに書く量を減らすことはとても大切です。
1分間振り返ることで「次はこれは省ける」と感じることもスキルアップしたことになります。
解いた後の1分を大切にする作戦はいかがでしょうか。
トレーニングを増やし、問題を解くときはいろいろ工夫を加えることで、学習の質を上げることができます。
レッスンが多くなりすぎないことと、いろいろ工夫の部分を具体的に練ってみると良いと思います。
最後になりますが、一般的にレッスンは楽しく、トレーニングは厳しくというイメージですが、
これを逆にした方が上手く行きそうです。
レッスンはすべてを吸収しようと楽しさを忘れて真剣に、トレーニングはできることを楽しみながら取り組むと良いです。
前述の通り、親が教える場合はレッスン20%に抑えるということは、トレーニングが80%以上です。
目を三角にして、できるようにさせようと必死にならず、どうやったら楽しいトレーニングになるのかを考えてフォローしていくと良いと思います。