サピックスの算数A授業とB授業の是非

今回のブログもいつも通り、個人的な見解です。

異論、反論がありましたら、コメントをください。

 

塾は講師を育てる必要があります。

プロ野球でもドラフトでいくら将来有望な選手を獲得しても、しっかり育てないと活躍はできません。

それと同じで、塾講師も学歴や講師のペーパーテストの偏差値だけでは戦力になりません。

塾や個別指導で学歴を売りにしているところがありますが、分かっている人は、それが売りでもなんでもないことが分かっています。

いわゆる知らない人を引き込みたい作戦です。

 

では、どうしたら塾講師が育つのでしょう。

  1. 塾が良い合格実績を目指している
  2. 講師間での競争がある
  3. ベテラン講師からアドバイスをもらえる
  4. 優秀な生徒を教える
  5. 1教科に専念する
  6. 小学生だけを教える

 

主だったものを6つ挙げましたが、これに異論を唱える人はいないでしょう。

5は異論があるかもしれません。

 

1は、ホームページで合格実績をしっかり出しているところなら大丈夫です。

しっかりというのは単年ごとで、学校名は五十音順ではなく、難関校を目立つ位置に配置することです。

塾講師は難関校合格を目指すのが使命なので、塾から煽られると、やる気になり、自然とスキルアップに勤しむことになります。

評価対象のメインが合格実績という塾は講師の目つきが違います。

 

2は、大手塾で校舎間で競っている場合などです。

これも担当クラスの上昇にエネルギーを注ぎます。

スキルアップにつながります。

中小塾でも教科間で競う場合もあります。

私も現役時代は、敢えて、国理社の講師に酷いことを言いました。

「算数と国語で偏差値10離れるのが考えられない」などです。

「悔しい」、「見返したい」と思う人は、スキルアップにつながるでしょう。

 

3は、実はとても難しいです。

どの塾でも講師を育てるプログラムがないと思います。

マニュアルはあってもそれを生かすのは難しいです。

 

4は、上位クラスを担当すると、下手な授業をするとクレームがきます。

そうならないように、良い授業をしようとすると、講師が成長します。

生徒がひとりの講師に教わり続けていると、その授業が標準になる恐れもあります。

1つの教科をいろいろな講師が担当すると、比較されるので、その講師たちの目の色が変わることでしょう。

と言っても、経験の浅い講師が上位クラスを担当することはあまりなく、実現するのは難しいです。

 

5は、複数教科をプロ級の腕前になるのは至難の業です。

どんな選手もホームランバッターになれというのに近い話です。

1教科に専念してその教科を探究していく方が成長が早いです。

 

6は、経営者が低コストを目指すと早い時間帯は小学生を教え、遅い時間帯は中学生を教えるというような塾ができあがりますが、講師の成長にとっては利点はありません。

5と同様に、両方ともしっかり探究していくのは至難の業です。

 

ここまで900字を超えていますが、まだタイトルとは関連がないように思われていると思いますが、実は関係があります。

サピックスのA授業とB授業は、いまの講師を育てる6個のうち、3と4が可能となります。

最も実現するのが難しい3と4が可能となるのが大きな利点です。

3と4以外にも、1はサピックスの広告の柱で、2はサピックスの校舎数を考えればあてはまり、5はサピックスは1教科専念で、6は以前は中学部がありましたが関係の無い組織だったので中学生を教えることがありませんでした。

つまり、上記の6個はすべてあります。

 

3は、A授業を担当すると、ベテランのB授業の講師からアドバイスをもらえ、教え方、強調するべきポイントが分かります。

同じクラスを2人が担当するというシステムではないと、なかなかこのような生きたアドバイスはないと思います。

 

4は、最上位クラスもB授業とA授業の2人の講師が教えるので、優秀な生徒を教える機会に恵まれます。

中堅塾では、塾の代表が毎年最上位クラスを担当するというようなケースもあるようです。

サピックスでも最上位クラス(特に大規模校)のB授業は同じエース級の講師が毎年変わらず担当していると思いますが、その相方(A授業)はキャリアの浅い講師になっている可能性が高いです。

逆に言うと、キャリアの浅い発展途上の講師でも最上位クラスを担当できるわけです。

とても大きなメリットだと私は思っています。

また、サピックスは、A授業やB授業だけでなく講習や土特なども考えると、いろいろな講師が上位クラスを担当するので、「あの先生イマイチ」と言われないようにしっかり授業をしていることでしょう。

それを目指しているのかどうか分かりませんが、講師にとっては油断のできない人事システムです。

 

このように、サピックスの講師を育てている最大の要因はA授業とB授業というシステムにあると言ってもいいと思います。

 

ところが、生徒さんの立場に立ってみると、このA授業とB授業のシステムがプラスでしょうか?

サピックスで偏差値60以上を取れる子にとってはシステムはどうでも良いと思います。

教材が良問が多く難易度がそれなりに高く、講師の教え方がスタンダードならば、どんなシステムでも伸びていきます。

 

では偏差値60に届かない多くの生徒さん達にとってこのシステムはどうでしょう。

個人的見解では、学力がつかない原因だと思います。

A授業とB授業というのは、他の塾で180分で学習することを、90分ずつくり返すことになります。

復習テストもあるので厳密にはそうではありませんが、イメージとしては、他の塾の半分の時間で取り組み、それを再度くり返すことになります。

 

例えますと、ネイティブスピーカーのアメリカ人が通常のスピードで2回話してくれるとします。

それと、同じアメリカ人が、いつもの半分のスピードでゆっくりゆっくり1回話してくれるとします。

英会話に長けていない私なら、断然後者の方が理解できます。

通常のスピードで2回くり返されたところで、まったく聞き取れていないので意味がありません。

こんな現象がサピックスで起こっているのではないでしょうか?

 

講師を育てるシステムなので、A授業とB授業は未来永劫続いた方が良いと思いますが、生徒さんの立場としては、そのシステムに飲まれないように取り組むしかありません。

サピックスで中堅クラス以下にいる方はこのようなシステムのハンデがあることはご存知でしょうか?

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