新・先取り学習

勉強スタイルに、「先取り学習」と「予習」があります。

先取り学習というと、例えば4年生が5年生の学習をしていくようなイメージで、予習というと、次に塾に行ったときに教わる学習を事前に勉強しておくようなイメージです。

両者は大きく異なるものと捉えている人もいると思いますが、予習は塾で教わるものと違うやり方で行うスタイルが確立されていれば話は別ですが、そうでなければ、結局は塾で教わる前に、同じ勉強をすることになります。

つまり、先取り学習と予習は学習する時期は違いますが、本質は同じと言っても良いです。

先取り学習や予習にはメリットがあります。

それは塾の授業を受けるときに、吸収力が上がることです。

しかし、塾の授業と上手く棲み分けができていなければ、勉強に無駄が多くなり、学力が高まっていきません。

トータルで見ると、それほどプラスにならないような気もします。

当教材は小学4年生から6年生までの難関中学入試に対応した教材をラインナップしていますが、経験上、3年生の学習にも一家言あります。

3年生は「書き出し」の学習をした方が良いということで、教材を用意しています。

「書き出し」はとても有効ですが、そこからさらにもう1歩踏み出せないかな?と思い続け、「対話式算数・基礎」をつくってきました。

しかし、つくり始めると、こうした方が良いかな?ということが次々と出てきて、3歩進んでは振り出しに戻るということをくり返しました。

しかし、試行錯誤を続けて数年、ようやく定まってきました。

ジャンルとしては「先取り学習」ですが、誰もが想像する先取り学習ではありません。

塾でやることと同じことを事前にやるというものではありません。

作業することがメインとなります。

角度なら分度器で角度を測る、分度器で角度をつくることから始まります。

比のような問題も学習しますが、そこでは線分図でめもりをたくさん書いてもらいます。

こういった体験は受験勉強ではすることがないと思います。

テクニックを身につけて問題が解ければいいではなく、作業でイメージをつくることを目指します。

4年生以降、塾で受験勉強のカリキュラムが始まったときに、その作業で得られた実感が活きてきます。

実感が伴って理解した方がスムーズにしっかり吸収できます。

どうしてその計算で求められるかとか、どうしてそのように書いて解くのかがしっかり理解できます。

先取り学習というと、必死に背伸びして学習しているイメージになりがちですので、当教材の先取り学習はそれとは一線を画していますので、ここでは「新・先取り学習」という名称にしました。

教材作成のポイントを少し書きます。

一般的に、良い教材というのは、テーマの導入が理解しやすく、その後、練習問題になります。

悪い教材はテーマの導入で解き方を覚えることを促し、その後、練習問題になります。

しかし、中学受験の算数では、それは5年生以降の教材の話で、4年生まではあまり深いことを理解することはできませんし、かといって解き方を覚えることを促しても、質の低い勉強になり、長い目で見てマイナスの方が大きいです。

3~4年生は程よいところを目指すことになります。

「対話式算数・基礎」は、小学3~4年生の教材ですので、理解できる導入は目指していません。

当然、解き方を覚える勉強でもありません。

メインは練習問題です。

しかし、練習問題といっても、一般的な問題集のようないろいろな問題を解いて力をつけるという目的ではありません。

作業することを促す目的の練習問題です。

線分図をかく問題ならば、線分図の最初のきっかけだけをあらかじめ載せて、そこから子供が自力で書いていくというものです。

そのあたりのさじ加減は微妙で、ほとんど線が書いてあって、穴埋めで数字を埋めていくような教材を目にすることがありますが、それでは作業力向上にはまるで関係なく、勉強のための勉強になっています。

私はそれを勉強ごっこと呼んでいます。

また、余白欄だけつくり、そこに線分図を自由に書いてもらうのでは、適切な大きさ、適切な位置で書く習慣にならず、もう少しアプローチした方が良いと思っています。

テーマごとに、これはどこまでこちらで書いておき、どこから子供に自力で作業してもらうかの判断に意識を集中させて、練習問題をつくっています。

そこがメインは練習問題というところです。

練習問題で、たくさんの作業をしてもらいますが、その作業の手順を導入で行っています。

導入は理解することでも、解き方を覚えることでもなく、作業の手順が中心となります。

とは言いましても、作業の手順を身につけることを目的にすると、ある程度、解法の理解はできるようなものにはなっています。

解き方を覚えて練習問題を解くことと、作業の手順を覚えて作業をすることは、次元が異なります。

前者は弊害の方が大きいですが、後者は作業をするためには作業の仕方を教わらないと始まりません。

練習問題が解けることに価値を見いだすならば、先取り学習をするしないに関わらず、普通の市販の教材で十分です。

しかし、もうワンランク上の次元で捉え、作業をすることに価値があると思われる方は、「対話式算数・基礎」で新・先取り学習をお勧めします。

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