- 2021年2月19日
サピックスが1990年代に一気に日能研、四谷大塚を抜いてから、ずっと合格実績No.1に君臨しています。
簡単に言えば、難関中学に入る力のある受験生がサピックスを選んでいるからではありますが、日能研や四谷大塚を抜くのに、それまで日能研や四谷大塚を選んでいた優秀な受験生たちをサピックスに引き寄せなければならなかったわけです。
そのための作戦は下のようなものがあります。
- 日曜特訓(SS特訓)
- GS(GWの授業)
- A授業とB授業
- 理社を軽視しない
- 復習主義
このようにいろいろとありますが、最も効果的だったのは、復習主義にもつながりますが、勉強の単純さです。
今週はこれを反復して何回もやれば、良い成績が取れ、上のクラスに行けるという単純明快な学習を提示したことです。
日能研は、関東系と本部系に分かれ、テキストは複雑で、授業で何をやっているのか、家で何をやればいいのか、分かりにくいです。
四谷大塚は、6年後期の評判が悪かったのが最大の要因ではありますが、その当時は、塾というよりもテスト会だったので、どういう勉強をしたら良い成績を取れるかを考えなければならなかったところが精神的な負担増だったと思います。
人間、これさえやれば大丈夫という単純化に魅力を感じますので、それに合致したのだろうと思います。
私自身、四谷系とサピックスで教えたことがありますが、サピックスの方が学習システムが単純なので、教えやすかったです。
サピックスは授業が楽しいと評されるのは、単純なシステムだからとも言えます。
サピックスが復習主義を謳っているので、予習というものは効果無しのイメージを持たれている方も多いと思いますが、それは大きな間違いです。
予習をしないイメージとしては、すでにコミュニティができあがっているところに、一人で参加することに近いと捉えると良いと思います。
コミュ力に長けていて、いきなり入っていって、中心人物になるような人もいれば、もうコミュニティができているから入りづらいなという人もいると思います。
予習も同じで、いきなり授業を聞いて、ついて行ける人は予習の必要はありません。
しかし、初めての学習で、納得いかないことがあったり、ついていけない部分があったりして、説明を聞き逃していたら、予備知識不足が原因で授業の吸収力不足になっていることになります。
サピックスは予習がいけないと言っているわけではなく、復習で数値替えの問題を反復しまくることで、合格実績No.1の塾が維持できるとしているだけです。
予習をして「知っている!知っている!」といって授業を妨害することは論外ですが、そうで無ければ、予習がマイナスになるわけがありません。
もしマイナスになるのでしたら、転塾などして既に学んでいる単元は、サピックスの授業を受けたら、苦手単元になることになります。
転塾で学習していない単元に苦しむなら分かりますが、学習している単元が予習となることから苦しむなんて、どう考えてもおかしいです。
サピックス=復習主義としてメソッドとしていることや、四谷大塚が予習主義としているので、それに対抗するために、予習はしない方が良いというようなトーンになるかもしれませんが、ポジショントークです。
予習して予備知識があって、講師の説明の細部まで聞いて吸収した方が、学習効果が高いことは、自明の理だと思います。
それがいけないという論理的な説明はできないと思います。
授業を行う講師としては、説明しているときに、全く予備知識の無い生徒さんたちが、目を丸くして、なるほど!という顔をしてくれた方が、心地良いですが、それは講師都合だと思います。
予習というのは、塾にとってとても難しいです。
「うちの子、予習ができないから辞めます」といって退塾につながりやすいからです。
そのため、予習主義の塾でも「読んでくるだけで良い」「解き方だけ分かるくらいで十分で、塾でどうしてその解き方をするのか理解すれば良い」といった、何とも歯切れの悪い説明になります。
中途半端の勉強は効果が出ないので、予習するなら徹底的にというのが、学習効果を高める行動だと思うのですが、そうすると、退塾につながるから言えないのでしょう。
上記の通り、いきなり新しいことを教わって理解できる優秀な生徒さんでなければ予習は有効です。
優秀な生徒さんは、別の理由になりますが、グイグイ先取り学習をすると効果的です。
つまり、誰でも予習は有効です。
解き方だけ覚えて、類題ができました!という低品質な学習でしたら、予習は必要とは思いませんが、授業で深く理解するには、それなりの予備知識が必要です。
予習するなら「1回読むだけで理解できなかったところは授業」としていたら、どんどん予習の質が下がります。
理解できなくてもいいことになるからです。
いろいろな練習問題まで解けるようにしなくても良いですが、基本骨格になる例題までは、理解して解けるようにしておくことが、予習を効果的にするために必要です。
教材はもちろん対話式算数をお勧めします。
通塾しないでも大丈夫という目的の教材ですので、予習して例題を理解して解けるようにということなら最適です。
復習主義の塾で予習をしたら、以下の理由で嫌な顔をすると思います。
- 予習しないことが前提の授業を展開している
- 復習が疎かになる
- 知っていると好奇心がなく聞かなくなる
1番は、多くのクラスで、「とりあえず点数が取れるように解き方だけは覚えよう」という指導になっています。
上位クラスはもっと深いところまで説明していると思いますが、事前に予習などで予備知識を持っている生徒さんも多いと思います。
塾では1人1人を丁寧に見ているわけではないので、把握していないと思います。
2番は、予習して授業の吸収力が上がれば、復習が疎かになっても問題ありません。
授業が復習の形になれば、家での復習は相当減らせます。
3番はむしろ逆だと思います。
対話式算数を使って予習する場合は、塾のカリキュラムに合わせるのではなく、対話式算数のカリキュラムに合わせて、8割くらいの単元が塾の予習になるようにします。
塾で学習する1か月前くらいに学習すると、ちょうど良いと思いますが、そこはあまり拘る必要が無いと思います。
対話式算数の本編を読み、例題を解き、例題が解けるような状態にする
↓
塾の授業を受け、塾の課題(復習)を取捨選択して取り組む
↓
しばらくしたら、対話式算数の練習問題を解いて復習する
この流れで、学習効果が高まり、定着しやすくなると思います。
良く塾の成績を上げたければ、手を広げずに、あるものをしっかりやることと言われます。
しかし、そのしっかりというのがなかなかできないのです。
しっかりというのは、復習の回数ではありません。
復習の質です。
質を上げることは容易ではありません。
作戦を変えて、しっかりができやすくなるような体制を目指した方が良いと思います。