優秀な子はいつから始めるのがベストなのか

6年生秋に偏差値70をとった生徒さんが3人いたとします。

どこの偏差値かということが重要なのはよく分かっていますが、これはあくまでもかなり優秀というイメージでとらえてください。

男子なら、筑駒、開成、麻布のどこでもだいたい受かって、女子なら桜蔭、渋幕、早実のどこでもだいたい受かるというレベルです。

 

その3人の生徒さんは、それぞれ「1年生から通塾を始めた」、「新4年生から通塾を始めた」、「5年生夏から通塾を始めた」とします。

紛らわしくなるので、3人の名前をA、B、C君とします。

A君が「1年生から」、B君が「新4年生から」、C君が「5年生夏から」とします。

 

例えばC君のような子を見たら、「やはりできる子はいつから入塾しても追いこしていくんだ」と思うはずです。

追いこすというのは点数だったりクラスだったりしますが、本当にすべての学力で追いこしているのでしょうか?

また偏差値70で並んでいる場合は、本当にすべての学力で並んでいるのでしょうか?

今回のブログは「偏差値が同じならば学力は同じなのでしょうか?」という問いです。

 

普通の人がそれを答えるとしたら、同じというかもしれません。

あるいは、遅くから始めたC君が学力が高いと思うかもしれません。

 

まず、A君ですが、本人の能力だけでなく、ご家庭の影響も考えた方がいいです。

言い辛いですが、マイナス要素です。

1年生から始めるということは、3・4年生の間は万全のフォロー態勢で進めていた可能性が高いです。

5年生や6年生のときには家庭教師が付いている可能性もあります。

 

そうすると、教えられる学習が多くなって、スケールの大きな生徒さんに育ちにくいという面があります。

よく言えば、できる問題とできない問題を見極めスマートに解いていくことができます。

悪く言えば、難しい問題に太刀打ちできません。

6年後半になって失速気味になりがちです。

 

入試問題が難しくなると苦戦する可能性がありますが、4教科トータルの力は安定しているはずなので合格に届きます。

強さは感じないけど、総合力で合格間違いなしというタイプが多いです。

 

B君に比べて早い時期から始めていますが、それによるアドバンテージを感じることはほとんどありません。

算数教材塾・探求でも3年生の教材をご用意していますが、はっきり申しますと偏差値70のお子様はそういう教材をやってもやらなくても学力に差が出ないと思います。

こんなことを書くのは辛いですが…

楽しければやるという感覚です。

 

とは言いましても、偏差値60台の優秀な生徒さんならば、3年生の学習は有効だと思います。

楽しくいろいろ書き出したり、いろいろなことを覚えたりすることで、脳が刺激を受け、学力が高まると思います。

算数教材塾・探求の3年生用の教材も生きます。

 

先取り学習についても触れてみます。

先取り学習は早いだけでは意味がないと思っています。

追いつかれて終わりです。

競馬の先行馬が馬群に吸収されるような感覚です。

マラソンランナーで前半飛び出す無名選手は、大抵、失速してかなり順位が悪くなりますが、それに近いケースもあります。

力の劣る生徒さんが先取り学習をやると、地に足がつかない状態での学習になりがちで、大きなマイナスになります。

 

先取り学習は深い方向に進んでこそのものです。

例えば、予習シリーズで先取り学習をするのならば、先取りだから基本演習問題集だけということではなく、やるからには標準の演習問題、できれば応用演習問題集です。

それがきついのならばやらない方が良いと思います。

先取り学習というと単元を進めるものを思い浮かべますが、算数オリンピックの過去問で深い方向に進める学習の方が効果的だと思います。

その次のステップは、本棚に中学への算数や数学の本を入れておけば、興味を示したら勝手に始めることでしょう。

豊臣秀吉みたいに、鳴かせてみようではいけないと思います。

 

では、次はB君です。

A君の親が過度のフォローをせず、算数オリンピックの問題などの深い学習に取り組んでいなければ、A君とB君は同じで区別がつかないと思います。

しかし、一般論として、A君は上記のように難問に弱いのに対し、B君は教えられる量が少ないので、難問に強くバランスの良いタイプが多いです。

A君が先取り学習として深い学習に取り組んでいましたら、先行している分だけA君の方が優位です。

優位とは言っても、勉強は逆転も可能です。

卓球やフィギュアスケートや体操などは、かなり幼少の頃から練習に励んでいて、4年生頃からの参戦では追いつけませんが、体の使い方と脳の働きの違いだと思います。

B君の方が無難でいいような気がしますが、いいとこ取りをしたいので、3年生の頃はほぼ放任で、算数オリンピックの過去問は興味があったらやるという体勢が良いと思います。

そういうものに興味がなければB君を目指します。

 

では、最後にC君です。

受験勉強を始めるには遅いですが、超優秀なタイプなら6年秋にはトップレベルまで昇り詰めます。

しかし、それまでの問題演習量はかなり少ないです。

積み上げてきたもの、経験したものが少ないので、そのハンディキャップを乗り越えられるだけのセンス、思考力が必要です。

論理的ではなく閃き派のなせる技といっても良いかもしれません。

1回経験して類題を解く人と、初めて見る問題での対決に勝つためには、やはり閃きの力が大切です。

 

A君やB君とC君は、採点をすると違いが分かります。

A君やB君は「手堅い」と感じます。

C君は「鍛えられていないけどスケールが大きい」と感じます。

高いレベルの入試問題になると、C君の場合は弱点が現れる場合もあります。

その弱点はどこかは人それぞれなので一概には言えませんが、A君やB君にくらべて弱点が多いことは確かです。

A君やB君も不安定な場合がありますが、C君は不安定だと思います。

 

最後に、心がけ方について書いていきます。

A君とB君は普通の学習で良いです。

始める時期が、C君以上B君未満で新5年からのスタートだとすると、良質な問題にたくさん触れる必要があります。

普段の学習を上手く取捨選択して一気に挽回する作戦をとります。

C君は一気に挽回はしません。

基礎の土台が固まらないからです。

基礎重視で、お子様の潜在力に期待します。

頭角を現したら、良質な問題に切り替え、挽回態勢に入ります。

 

あくまでも一般論で、例外もたくさんありますが、始める時期によって意識することを変えると、より成功に近づきます。

今回はトップレベルの生徒さんについてでしたが、もう少し幅広く見ても、同じことが言えます。

中学受験を始めるならば新4年生、最難関の中学に入れなくても良いという場合は新5年生のスタートでも良いと思います。

大学は同じ結果になると思います。

また、4年生の間は自宅学習をして新5年生から通塾スタートというのは、4年生からスタートしているのと同じです。

周りに流されずに、満を持して中学受験の勉強をスタートして欲しいです。

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