中学受験で役に立つ小学3年生の学習

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小3から始める理想的な学習 ――“先取り”よりも大切なこと

「中学受験は早く始めた方が有利ですか?」
よくいただく質問です。確かに早くから塾に通い、先取り学習をどんどん進めれば安心感は得られます。

でも実際のところ、早く始めれば必ず有利になるとは限りません。
むしろ3年生の時期に大切なのは、“量”よりも“質”、そして「算数と数字を楽しむ力」を育てることです。


先取り学習について

「先取り学習をやれば伸びる」というのは半分正解、半分誤解です。

子どもにはそれぞれ発達段階があります。精神年齢や思考の成熟度によって、今の学習が本当に“身になる”かどうかが決まります。

  • 早熟な子で、常に半年以上先の内容を余裕で理解できる子は、先取り学習の恩恵を受けられます。
  • しかし多くの場合、いくら先に進んでも結局は“追いつかれる”のです。そうなると、早く始めた努力が必ずしも成果に結びついたとは言えません。

つまり、先取りは「誰にでも有効な魔法」ではなく、子どもの発達と能力を正しく見極めてこそ活きる学習法だと理解しておきましょう。


計算と簡単な問題の学習

「やってもやらなくてもあまり変わらない」――これが正直なところです。

ただし、勉強習慣をつけるという点では非常に意味があります。
毎日机に向かう、問題集を1ページやる、その積み重ねは“学習の生活化”につながります。

受験勉強は短距離走ではなくマラソンです。
早くから“習慣”を根づかせることは、大きな財産になります。


ハイレベル問題への挑戦

「先取りはしたくないけれど、難しい問題に挑戦したい」――そんな子には、ハイレベル問題を取り組ませるのも一つの手です。

ただし、これはあくまで子ども自身が挑戦したいと感じている場合に限ります。
親の期待やエゴで与えてしまうと、やる気が続かず、かえって逆効果になることが多いです。

正直に言えば、効果の面では先取り学習の方が優れています
けれど、「挑戦したい!」という気持ちを尊重すること自体が、学習意欲を伸ばす大事な栄養になるのです。


算数パズル・知的な遊び

「ナンプレ」や「カックロ」、そして将棋・囲碁・オセロ・トランプ……
こうした“知的遊び”は、楽しみながら戦略を立てる力を育みます。

専門家として「どれが最も効果的か」と断言はできませんが、熱中して取り組めるものであれば、それはすべて“算数の素地”を養うことにつながります。

最近はスマホゲームの中にも、頭を使う戦略型の良質なものがたくさんあります。
「遊びながら頭を使う」経験は、子どもにとって大切な宝物です。


塾の“思考力問題”について

塾の教材には「思考力問題」と銘打ったものもありますが、実際にはそれほど負荷が高いわけではありません。
取り組んだ子とそうでない子で、劇的な差を感じることはあまりありません。

ここに過度な期待を抱く必要はないでしょう。


書き出し問題のトレーニング

これは私が3年生指導の中で「最も効果的」と確信しているものです。

例えば――

9月18日は 9+1+8=18 になります。
では「たして10になる日付」をすべて書き出してみましょう。

こうした「書き出し問題」は、子どものポテンシャルを引き出すだけでなく、その力がだんだん伸びていく様子を実感できます。

👉 もし書き出しの練習をやらせたいと思う方は、ぜひ当教材の 『小3鍛える算数書き出し』 に取り組んでみてください。


計算練習について

計算練習には、大きく2種類あります。

  1. 計算を正しく解く技術を身につける練習
     これは正直、やってもやらなくても最終的には同じところに到達します。
  2. 暗算力を鍛える練習
     これは算数の基礎体力づくりとして非常に重要です。

特に暗算で鍛えたいのは以下の力です。

  • 3桁×1桁
  • 3桁÷1桁
  • 2桁以下の10個前後の数字をテンポよく足す
  • 2桁×2桁(20以下→30以下→50以下と段階を踏む)
  • 3桁以下の引き算をスピードアップ
  • 最小公倍数を暗算で求める力

これらを磨いておくと、4年生以降の応用問題への移行がスムーズになります。


日常生活での数字の常識

3年生のうちから意識してほしいのは、「数字が自然に飛び交う生活」です。

たとえば――

  • 身長15m、体重300kgといった非常識な数字は誰も書きません。
  • でも「時速」「面積」「体積」「割合」といった常識は、意外と高学年でも抜け落ちがちです。

日常生活の中で「時間」「速さ」「広さ」「割合」を自然に話題にしていくことが、数字感覚を養います。
「歩いて駅まで10分だから時速は…」と親子で会話するだけでも、素晴らしいトレーニングになります。


まとめ

小3の学習で大切なのは、ただ「早く始めること」ではなく、

  • 習慣を作る
  • 数字を楽しむ
  • 書き出しや暗算で基礎体力をつける
  • 日常生活で数字を自然に使う

この4つです。

受験勉強は長い道のりです。3年生のうちは「飛び級」よりも「地固め」。
焦らず、楽しみながら算数を生活の一部にしていくことが、後の伸びに直結します。

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