単元別ならできるのに、模試で点が取れない理由

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必要なのは「知識の暗記」ではなく「引き出しを開ける鍵」

「塾の毎週の確認テストでは合格点が取れるのに、模試や実力テストになると急に点数が落ちてしまう……」

中学受験の算数において、非常に多くの親御様を悩ませるテーマです。 宿題もしっかりこなし、単元名がわかっていればスラスラ解ける。それなのに、範囲の決まっていない総合問題になると、まるで初めて見る問題かのようにフリーズしてしまう。

この状態を目にすると、「うちの子は本当は理解していないのではないか」「応用力や国語力が足りないのではないか」と、さらに大量の復習を課したくなるかもしれません。

しかし、どうか焦らないでください。 単元別テストと模試のギャップに苦しんでいる場合、原因はお子様の能力不足でも、努力不足でもありません。「問題を読んだときに、どの引き出し(解法)を開ければよいか、その入口が見つかっていないこと」にあります。

大手塾のカリキュラムは、毎週のように新しい単元が目まぐるしく進むシステムです。能力の高い上位生が、トップレベルの環境でたくましく鍛錬を積む場として強力に機能しています。

しかし、その一方で「今週はつるかめ算」「今回は食塩水」と、あらかじめ使う道具が指定されているため、子どもたちは解く前から強烈なヒントを貰っている状態にあります。極端に言えば、本質を深く理解していなくても、「解法の暗記」だけでも目先の確認テストは乗り切れてしまう構造的な弊害があるのです。

今やるべきことは、問題を解く量をむやみに増やすことではありません。範囲のないテストで、自力で解法の糸口を見つけ出す「算数の読み取り力」を、優しく整えてあげることです。

算数に必要なのは、国語力ではなく「算数の読み取り力」

模試で点が取れないと、よく「国語力がないから問題文が読めない」と言われがちですが、これは少し解像度が粗い指摘です。 算数で求められるのは、一般的な読解力ではなく、「算数の読み取り力」です。

文章を読んだときに、 「これは速さの問題だけれど、途中で時間の差を使う場面が出てきそうだ」 「この条件は比に直して整理した方が見やすくなるな」 と、問題文から数量の関係性を掴み、解く入口を判断する力のことです。

どれだけ国語の偏差値が高くても、この算数的なフィルターを持っていなければ、総合問題の文章はただの数字の羅列に見えてしまいます。逆に言えば、各単元の解法という「材料」は、確認テストで取れている以上、すでにお子様の頭の中に眠っています。足りないのは、範囲のない海の中から、その材料を引っ張り出すための「きっかけ」に気づく練習なのです。

模試に強くなるための、家庭での「3つの作戦」

では、家庭学習でどのように「問題の入口を見つける力」を鍛えればよいのでしょうか。具体的でシンプルな3つのアプローチをご紹介します。

対策1:テスト直しで「なぜその解法を選んだか」を一言残す

模試の解き直しで、解説を見てバツを丸にするだけの作業は、少しもったいないと言えます。解説を見れば納得できるのは当然だからです。 本当に磨くべきは、「解説を見る前に、問題文のどこに注目すればその解法に気づけたのか」という視点です。

テスト直しのノートには、計算の書き直しだけでなく、次のような「入口の言語化」を1行だけ残してみてください。

  • 「時間の差が書かれているから、速さの比を疑う」
  • 「合計と差が見えるから、まずは和差算で整理してみる」
  • 「変化の前後が入り組んでいるから、表にまとめる」

バツを丸にするためではなく、「次に同じ入口に出会ったとき、迷わず引き出しを開けられるようにする」。これだけで、模試の直しは宝の山に変わります。

対策2:解き方が見えないときほど「条件を書きながら」考える

模試で手が止まってしまう子は、問題を読んだ後に「頭の中だけ」で解法を思い出そうとしがちです。しかし、範囲なしテストでは、考えてから書くのではなく、「書くことで考える」のが鉄則です。

分かっている数字を書き出す、関係を表にする、使っていない条件に印をつける。 算数が苦手な子ほど、解き方が見えないと何も書かずに白紙のままフリーズしてしまいますが、本当は逆です。解き方が見えないからこそ、まず手を動かして条件を整理する。その書かれた図や表を見て初めて、脳は「あ、これはあの形に近いぞ」と、過去の記憶とリンクし始めます。

対策3:「数の性質」で、雑に読むと間違える絶妙な負荷をかける

範囲なしテストの糸口探しを鍛えるには、「数の性質(倍数・約数・周期・余りなど)」の単元が非常に適しています。 文章題の典型題は、数字だけを拾って公式に当てはめれば解けてしまうことがありますが、数の性質は問題文の条件を1文字ずつ丁寧に読み解かないと、絶対に正解に辿り着けないからです。

例えば、電車の発車周期と時刻の関係を細かく整理させるような問題です。 大技や難しい公式は必要ありません。解説を読めば「あ、そういうことか」と十分に納得できる難度です。しかし、読み取りが甘いとコロッと間違えてしまう。このような「難しすぎないけれど、丁寧な読み取りと工夫を求める問題」こそが、子どもの入口を探す目を最も美しく育てます。

手が出ない難問(見学するだけの問題)を無理に解かせる必要はありません。スイスイ解ける作業問題と、手も足も出ない難問の「ちょうど真ん中」にある、少しだけ頭をひねる問題を選んであげてください。

最後に:材料はすでにあるので、道具の使い時に気づくだけ

単元別ならできるのに、模試で点が取れない。 それは、お子様に能力がないからでは決してありません。単元別テストで点数が取れているということは、家を建てるための素晴らしい「材料(知識)」は、すでに十分持っているという客観的な事実の証明です。

ただ、広大な模試という現場で、「どの材料を今使うべきか」の判断に少し迷っているだけなのです。

「もっと暗記させなきゃ」「もっと難しい問題を解かせなきゃ」と、やみくもに引き算を忘れた学習メニューを詰め込むのは逆効果です。 まずは日々のテスト直しで、「どうしてこの解法に気づけたのかな?」と、優しく問いかけてあげてください。

知っている知識を、使うべき場面で正しくくり出す。この「入口を整える楽しさ」にお子様が気づいたとき、模試や実力テストの答案は見違えるほど力強いものへと変わっていきます。

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