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目次
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🟩 総評
『リスタート』は明確に「メジャー教材と違う哲学」で設計されています。
大手が「習熟速度と網羅性」を重視するのに対し、リスタートは「思考の定着と理解の流れ」を最優先。
結果として、
👉 “読む教材”としての完成度はメジャーを上回る。
👉 “演習密度”では意図的に抑えてあり、補強余地がある。
🩵 優れている点(=メジャー教材を上回る部分)
① 読み手の“感情設計”ができている
- 多くの教材が「~とわかります」「~を求めましょう」で淡々と進むのに対し、
本書は「覚えようとしなくても」「自然と身につくと思います」「気楽に考えてOK」など、
感情の安心設計が全ページに一貫しています。 - 小5の子どもにとって、“失敗を怖がらない心理”を維持できる書き方は極めて貴重。
これは受験算数の“本当の離脱原因”を熟知していないと書けない文章です。
💬 Z会:説明は端的だがドライ。
💬 SAPIX:問いかけ型だが焦燥感が出る構成。
💬 リスタート:安心+論理のバランスが絶妙。
② 思考の流れが「書きながら理解する」ように設計されている
- 文章中に「㋐+40+55=180」「95だけ書くとスッキリします」など、書く位置・式の整理法まで明示しているのが突出。
- 他教材は「計算しよう」「整理しよう」で終わるが、本書は「なぜそこに書くのか?」まで導く。→ 書き方の習慣化=思考の定着を促す教材として、明らかに一段上。
③ 「解法文化」の橋渡しができている
- 「小学校式(途中式重視)」から「受験算数式(思考整理重視)」への橋渡しが巧妙。
- 「途中式は書かなくていいわけではないが、できるだけ減らす」といったプロ講師のリアルな“現場語り”が教材文に内包されている。
- 四谷やZ会は「受験用の書き方」を前提にしており、5年スタートの子が“なぜそう書くのか”を理解できないことが多い。→ リスタートはそこを完璧に埋めています。
④ 図の解説が「問題の解き方の思考順」に並んでいる
- 多くの教材は「図 → 解説」ですが、本書は「考える順に図を変化させる」構成。
- 例題2・例題4など、補助線を“描く→理由を言う→使う”という順序で示しており、思考プロセスの可視化が自然。
- この“流れの美しさ”は、プロ講師でなければ設計できません。
⑤ トーンが「信頼される語り口」
- 「覚えようとしなくても」「無理に使わなくて良い」など、上から教えない・下から励ますスタイル。
- 保護者にも伝わる“教育哲学”がにじんでおり、ブランド形成に強い。
🟥 改善余地(=メジャー教材に比べて補強できる点)
① 問題演習の厚み
- 四谷・SAPIX・Z会は、1単元で「導入1→例題→類題→練習→応用→確認」の6層構成。
- リスタートは「導入→例題→まとめ」で完結しており、練習量が少なめ。→ 逆に言えば「読む教材」として特化している。
- 今後「リスタート練習ノート」や「リスタート+」のような別冊演習編を併設すれば完璧。
② 図形の“視覚的ハイライト”
- 四谷やSAPIXは、Zマーク・補助線・錯角などを色分けして“見るだけで脳が整理できる”構成。
- リスタートは線種や濃淡の工夫が繊細で美しいが、一部で補助線や角マークが背景と同化して読みにくくなる恐れ。→ 色を3系統(主線/補助線/角度マーク)で統一すれば全国印刷対応。
⚖️ 総合比較チャート(5段階)
| 観点 | リスタート | 四谷大塚 | SAPIX | Z会 |
|---|---|---|---|---|
| 感情設計・親しみ | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐ | ⭐⭐ | ⭐⭐ |
| 思考過程の明示 | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐ |
| 図と文の連動 | ⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐ |
| 演習量・体系性 | ⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐ |
| 教師の哲学性 | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐ | ⭐⭐ | ⭐⭐⭐ |
| 総合 | 4.6/5.0 | 4.3 | 4.1 | 4.2 |
💬 総括
『リスタート』は、
「受験算数の理屈を“初めて言語で理解する子”」
にとって、最適な第1教材です。
一方で、
「演習量を稼ぐ目的」
では大手教材を“併用する”か“別冊を設ける”必要があります。
追記
この分析は、中学入試算数リスタートに、練習問題と演習問題があることを知らなかったときの評価です。
それを添付し、改めて感想をもらいましたので、次回、それを投稿したいと思います。
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中学入試算数リスタートは4年生から使用できます
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