- 2018年2月17日
中学受験をするのなら、通塾があたりまえと言われています。
私はそうとは思いませんが、常識です。
通塾以外のデメリットはよく語られます。
- 家庭教師(個別指導も)は高額すぎる・依存心が強くなる・ペースが遅くなる
- 通信教育はペースが乱れる・飽きる
- 動画授業は楽だけど力がつかない
- タブレット学習は楽しいけど力がつかない
- 自宅学習はペースが乱れる・立ち位置が分からない
動画授業やタブレット学習に対して辛辣なことを書きましたが、
多いときは1ヶ月に1回以上、直接お客様からそのように伺います。
毎回、「やはりダメなんだ」と実感します。
新世代の学習ですが。
それに対して、通塾もいろいろなデメリットがありますが、
今回のブログは進度について書いてみます。
サピックスでは5年生で全カリキュラム終了と思われていますが、そうではありません。
レベルが高めのことは6年生の夏まで先送りして、6年生の夏にラストスパートで仕上げます。
つまり、実質は3年生(新4年生)2月スタート、6年生8月終了ということになります。
31ヶ月です。
四谷大塚は以前は5年生からカリキュラムがスタートし、6年生の7月に終了でした。
サピックスより13ヶ月も短かったのは、1週間2単元進めるという過激なパターンだったからです。
大手塾は1週間のカリキュラムでそこが短所だから2週間のカリキュラムでゆったりじっくり取り組むという塾もありましたが、
全期間の長さが同じならば、1週間1単元でも2週間1単元でもゆったりの度合いはほとんど変わりません。
前職では、私が入社前は、何ヶ月も割合を学習したり、何ヶ月も立体図形を学習したりというように、
同じ単元を数ヶ月続けるという個性的なカリキュラムでした。
でも、だからといって大きな効果があったわけではありません。
結局は全単元を学習するのに何ヶ月かけるかということが大きいのです。
男子難関中や、一部の共学や女子中で出題される、場合の数や数の性質や立体図形などの骨太の問題がならぶ入試問題に対応するには、
早めにカリキュラムを終わらせ、その対策に時間を割きたいところですが、
その対象者は、首都圏中学受験人口5万人のうち5千人もいないことでしょう。
つまり、ほとんどの受験生は全カリキュラムの学習を31ヶ月で終了する必要がないわけです。
6年生の夏頃から総合演習を始めますが、それとカリキュラム消化を並行して学習し、
6年生の11月頃にカリキュラム修了の34ヶ月かけても良いと思います。
たった3ヶ月の10%余裕を持っているだけではありません。
脳の成長を考えると、4・5年生の3ヶ月と、6年生秋の3ヶ月は全く違います。
難関校でなければ、5年生1月終了と6年生11月で比べた方がいいかもしれません。
24ヶ月と34ヶ月の違いです。
恐ろしく違います。
いま書いたことですが、塾では、こんなことは当然のように分かっています。
私の斬新な主張ではありません。
難関校を受ける人はカリキュラム修了は6年生の夏、そうでない人は冬までで良いと思っています。
でも、どうしてそういうようになっていないのか分かりますでしょうか?
それは、言いにくいことですが、お客様のご要望です。
難易度で変化をつけるのは良いけど、同一授業時間、同一カリキュラムでないと不満の声が殺到すると思います。
成績が上がっても、物理的にクラスが上がれなくなるからという理由で、
そのことは理解はできますが、結局のところ、それが原因で無駄にペースが速くなっています。
身につかないこと前提でハイペースで進めていって、
6年生の後半の総復習にすべてを賭けるのが理想の姿とは到底思えません。
「ゆったりやって、もっとしっかり身につけておけば」
「もっと反復して定着させておけば」
ほとんどの受験生に当てはまる内容だと思います。
そういうことができていれば、もっと効率の良い学習になっていたと思います。
四谷80%偏差値58くらいの学校に合格することを目標にするのならば、
具体例として、次のようなもので十分だと思います。
- 5年生の間に、速さ、割合、つるかめ算などの特殊算、規則性、求積の基礎反復練習を充実させる
- 6年生の春から夏にかけて、平面図形と比、立体図形と比、通過算などの速さを取り組む
- 6年生の秋に、場合の数、数の性質、グラフで総仕上げ
4・5年生の間に、深い内容ではないとはいえ、全カリキュラムを触れる必要がありません。
このような進度のデメリットが自宅学習では解消されます。
とは言いましても、通塾している方に退塾を勧めているわけではありません。
現在の進度は大きなハンデになっている場合があるということをご理解くださり、
その上で、宿題の取り組み方、復習の仕方、自発的な勉強などの学習スケジュールを立てた方が良いと思っている次第です。