- 2020年7月2日
たびたび書いている内容のような気がしますが、総集編ということでお読みくださると幸いです。
塾講師時代は、当然分かりやすく指導することを心がけました。
その結果、よく言われるのが、
「授業では分かるけど、家では解けない」
というものです。
塾講師もややベテランになると、その言葉を言われたら負けという捉え方をします。
つまり、授業は分からせて当然で、家でもできるようになってもらうということを主眼におきます。
それくらい分かることとできることには開きがあります。
では1問分かりやすい(手前味噌ですが)説明をします。
10年くらい前の女子学院の問題の一部です。
A,B,Cの3人の先生が折り紙を持っています。
C先生はさくら組の人全員に1人7枚ずつくばろうとしたら,8枚たりませんでした。
そこで,A先生から93枚もらったら1人10枚ずつくばることができ,さらに7枚あまりました。
さくら組の人は何人いますか。
また,C先生が初めに持っていた折り紙は何枚ですか。
かなり易しめということもありませんが、合格する子は正答率80%はいくと思います。
方程式を使うとすると、さくら組の人数をx人とすることでしょう。
算数で分類すると過不足算ですが、「面積図」、「線分図」、「①を使う」、「表」などを利用します。
タイサンでは、4年生は「表」、5・6年生は「①を使う」というようにしていますが、
来年度の大改訂では、4年生では過不足算を扱わず、5年生で初登場とします。
「過不足算は4年生で」という既定概念にとらわれずに、
効率・効果重視ならば、5年生で割合と比を学習してから、倍数変化算などとともに割合の消去算として学習した方が良いと判断したからです。
話が逸れすぎていますが、このブログにお越しいただいた方の検索ワードで、なぜか「サピックス 過不足算」というものが多いので、
次年度は、小4対話式算数から抜け落ちる分、デイリーサピックス4年の過不足算に準拠した解説書は書こうと考えています。
では、本題に戻り、解説をします。
対話式にしてみます。
先生「これは過不足算です。問題文からその匂いが漂うでしょ?」
生徒「匂いって…でも過不足算だとは思いました」
先生「典型的な4年生で習ったような過不足算じゃないよね?」
生徒「はい。A先生が93枚くれたからですよね」
先生「そう。算数は、だれかが余計なことをするごとに難しくなるからね」
生徒「余計なことはしないで欲しいです」
先生「まぁ、その気持ちは分かるけどね。逆に言えば、それに対応できるようになればアドバンテージができるよ」
生徒「それはそうなんですが、それが難しいです」
先生「たしかにね。でも対応力を付けることを意識しよう」
生徒「はい。93枚もらっても過不足算で解けるんですか?」
先生「もらわなかったことにするの」
生徒「えっ!?」
先生「A先生から93枚ももらったから7枚もあまったんだよね?もらわなかったらあまらないよ」
生徒「はい。分かります」
先生「不足だよ。分かる?」
生徒「はい。当然です」
先生「当然じゃなくて、何枚かを言って欲しいんだよ(笑)」
生徒「あっ、そういう意味ですね。93-7=86枚不足ですか?」
先生「お見事!JGレベルだね!」
生徒「またまた~」
先生「7枚ずつくばると8枚不足、10枚ずつくばると86枚不足」
生徒「これならできます!」
続く
6年生でこんな対話型の集団授業はありませんが、こういう展開で進みます。
こういう授業を受けると、授業は分かるとなると思います。(そうだと良いのですが)
でも、この授業の流れでは家で解けるかどうかは分かりません。
大切なところが欠けています。
どこか分かりますでしょうか?
それは、普通の過不足算にくらべて93枚をもらうのが余計なので、
「枚数が変わらないように93枚をもらうな」
というところの強調が足りないのです。
逆に言えば、その強調だけすれば、あとは解説をしなくても良いくらいです。
順々に流れていって、生徒がウンウンとついていく授業では家で解けるようにならない可能性が高いです。
思考力がつかないと言ってもいいでしょう。
「93枚もらうというところがポイントだから、それを処理して解く」
これをしっかり吸収して、次にこういう処理の仕方を自発的にできないといけないのです。
過不足算の類題だけでなく、他の単元にもこういう処理の仕方をする場合もあります。
それが実行できるかどうかです。
集団授業ではひとりひとりの状態が手に取るように分かるというわけではありませんが、
1対1で指導すると、
「解き方が理解できて良し」という生徒さんもいますし、
「どうしてその解き方をしたのかキーワードを教えて欲しい」という生徒さんもいます。
もちろん後者の方が思考力アップにつながります。
授業を受けながら「どうしてそれをやったんだ?」という動機にこだわることが大切です。
私は塾講師時代、かなり合理的なタイプでしたので、
「黒板に書いてあることくらい、配付する解説に載っているんだから書く必要なし」
としていました。
でも、しっかり1問につき1、2分ノートを取る時間を与えました。
賢い生徒さんほど動機をしっかり書いていました。
ノートの取り方1つでも学力の付き方は異なります。
少しでも参考になりましたら、幸いです。
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また、上記の対話型の教材が良いなあと思われた方には、対話式算数をご利用なさることをお薦めいたします。
このブログではやや無駄な会話がありますが、実際はもう少しだけシンプルです。