覚える算数を避けて難関校を目指す(4年生)

最近の中学受験の勉強

中学受験の勉強は、中学入試で志望校に受かれば、それで終わりというわけではありません。

これから中学、高校、そして大学、あるいは、その上の大学院まで学問は続き、また、人によっては社会に出てからも勉強は続きます。

中学受験の勉強とは、その第一歩となり、一歩目はとても重要です。

ところが、いまの中学受験の勉強は、解き方を覚えて答えを出すという、これから先の未来がゾッとしそうな学習が主流です。

「合格実績を上げられるように難問に対応できるようにしたい」「中学入試の問題が思考系に振っているので、早めにカリキュラムを終わらせたい」

このような理由で、教材改定ごとにカリキュラムは前倒しになり、扱う問題は難しくなる傾向です。

解き方を理解できるほどのバックボーンがないのに、焦って大量に詰め込むから、上記のような解き方を覚えて答えを出す学習になっている子が多いです。

大事な視点も抜けています。

思考系の入試になっても早めにカリキュラムを終わらせる必要はありませんし、難問をいくら扱っても、強固な基礎が構築されていなかったら、難問に強くなりません。

ブログなどでも書いていますが、次の2問が特に気になります。

(1)10人から3人を選ぶ方法は何通りですか?

(2)504の約数の個数は何個ですか?

 

(1)は10C3と書いて、分子に10×9×8と書いて、分母に3×2×1と書いて、計算して120通りと答えを出す子が多いです。

Cなどを使うものなので、魔法の道具を使っているかのように嬉々として答えを出す子が多い印象です。

これは5年生で扱う大手塾が多いですが、塾によっては4年生でもこういう解き方を教わります。

スカイプ指導で、この解き方をする子に「どうして、こういう計算をしているの?」と聞くと、100%と言っていいほど、「これで答えが出ると教わりました」と返ってきます。

(2)は5年生の前半あたりで教わる塾がありますが、504=2×2×2×3×3×7で、2が3個で、3が2個で、7が1個だから(3+1)×(2+1)×(1+1)=24個と答えを出すことができます。

これをスカイプ指導で、どうしてこの計算になるか聞くと、(1)も意味の通じる返答は期待できませんが、(2)は絶望的です。

さらに約数の和を求める公式まで教わるケースがあり、それで答えが出る理由を聞こうものなら、「ブラックボックスです」と答える子が現れそうで怖いです。

解き方を覚えて、それで正解できれば得点が取れて自信が生まれ、算数が楽しくなるから良いという考え方もありますが、それは失速につながり、まったく意味が無い学習だと思っています。

 

覚える算数の何がいけないのか?

大人の中には、覚える算数で問題無しだと考える人もいると思います。

塾講師の中にも、そういう考えの人はいると思います。

実際、中学校や高校の数学では、公式を暗記して、それに問題の数値を当てはめて解いていた人もいると思います。

しかし、おそらく、そういう学習では、東大レベルまで行けないと思います。

東大を目指しているわけではないから、別に東大レベルまで行けなくて良いと思われる方もいると思いますが、難関中学は、東大に合格できる子に入学して欲しいと思っていて、そういう子を選別できる入試問題の作成を目指しています。

難関校を目指すというのは、東大合格を目指すことと同意と言っても過言ではありません。

公式を覚える学習スタイルで、中学生の頃は数学の点数はまずまず取れるけど、高校に行ったらまるで通用しないという生徒は、歓迎されていません。

つまり、公式を覚える学習というのは、数学の序盤でしか通用しない質の低い学習なのです。

質の低い学習を続けていては、社会に出てからも理系の考え方はできず、本当に、中学入試の切符を買って、中学生活を無難に過ごすことのみになってしまいます。

とは言いましても、公式を覚えるような勉強をしたけど、高校3年生のときに良い偏差値を出していたという人もいると思います。

それは恐らく、覚えるという次元が違うのだと思います。

「こういうことだから、こういう公式でできるんだ」と考えられる力があって公式を覚えているのか、「問題の数値を公式に当てはめればいい」と考えて公式を覚えるのでは、雲泥の差があります。

前章の(2)の解き方を聞いてみますと、恐ろしい学習の仕方をしている真っ只中にいると感じると思います。

 

なぜ大手塾では覚える算数を繰り広げているのか

覚える算数ではダメなことは、多くの塾講師は分かっています。

しかし、それがテキストに出てきて、テストに出てくるのならば、点数を取らせるのが仕事と強く思っていると、「理解できないなら、最低でも解き方を覚えて、このテストだけを乗り切ってくれ」という指導スタンスになります。

そういう状況の中でも、優秀な子は、公式を覚える学習から、徐々に、公式を理解する状況に移行できます。

多くの子が、その移行ができるのであれば、大手塾の学習が正義となりますが、一握りの優秀な子限定の話です。

一握りの優秀な子がいる限り、大手塾はこのカリキュラムや問題難度の改訂の必要性は感じないと思います。

「こんなにできる子なのに、まるで理解していないね」と思うことは多々あります。

四谷偏差値60台くらいの力のある子についての感想だと思います。

もっと優秀じゃないと通用しないということです。

何もフォローしなくても、四谷偏差値70を取れる子ならば、いまの中学受験界の荒波の中を泳ぎ切ることができると思いますが、四谷偏差値60台で、65以上の学校に行きたいと考えて、学力を付けていこうと思う場合は、大手塾の公式を覚える勉強は、避けたい学習です。

前章でも書きましたように、中学受験の勉強は、これから長く続く学問の入り口です。

その入り口の段階で「算数の勉強とは覚えて答えを出すもの」となってしまうと、取り返しがつかなくなりそうで、とても怖いです。

 

では、何をすればいいか

このように中学受験はいまは過渡期なのか、そもそも日本の教育が過渡期なのかは何とも言えませんが、健全に学力を付けていく学習は存在します。

それは、覚える算数にならない学習です。

覚える算数にならない学習というのは「書き出していく(作業する)」「どうしてこの計算で求められるか理解する」「この計算で何を求めたか把握する」「どのように考え進めていくか作戦を立てる」このような勉強です。

難度を上げすぎると、計算の答えが何を意味するのか分からなくなりがちです。

難しい問題は極力やらない方が良いと思っています。

4年生で学習する各単元について書いてみます。

数の性質 高度なので覚える算数になる
規則性 テーマによっては覚える算数になる
場合の数 学習の仕方によっては覚える算数になる
角度 覚える算数にならず、作戦を立てる要素が強い
面積 覚える要素もあるけど、作業する要素が強い
立体図形 作業する要素が強い
和と差の問題 長い目で見ると、しっかり取り組んでも、メリットもデメリットもあまりない(難関校を目指す子の場合)

 

難関中を目指すならば場合の数

「難関中を目指すならばサピックス」という広告をよく見ましたが、それは正しくはありませんが、「難関中を目指すならば場合の数」は正しいと思います。

場合の数ならば、正しく学習すれば覚える算数になりません。

正しい学習とは、書き出しから始めて、できるだけ作業を重視して、自然と計算で解けることを身につけていく学習です。

段階を踏んで行けばかなりの難問まで挑戦しても問題ありません。

ポイントは「道順」「選ぶ問題(コンビネーション)」「色を塗る問題」は覚える算数になりやすく、せっかく基礎の土台を固めたところを、黒船のようにズカズカと侵攻する恐れがありますので、これらの問題は時期尚早として避けた方が良いと思います。

あと、積の法則は覚える算数になりやすいですが、これは間違えるごとに、書き出して「だから、かけ算だね!」と確認していくと、計算の意味が掴め、学習の質が上がります。

「これは積の法則でかけ算!」ではダメです。

4年生にふさわしい場合の数をしっかり学習し、あるいは角度や面積などの平面図形、また、もう1歩進んで立体図形などを難問の領域まで学習していくスタイルが、学習の質の低下というデメリットが無く、スケールの大きい子に育てていく方法だと思います。

通塾していてもしていなくても、学習の質にこだわって勉強を進めていき、そのためには、難問を扱うべき単元とそうでない単元で仕分けすることが重要です。

 

1週間に60分で十分です

通塾していても通塾していなくても、場合の数に取り組むのは、1週間で60分程度で十分です。

塾の勉強が大変で時間が作れないというのなら、勉強の仕方が間違っていると思います。

当教材の小4長期「場合の数」は全20回です。

重要な問題はくり返し出てきますので、反復不要とすれば、毎週60分で1回が終わり、20週間で終了します。

反復をしても1年はかかりません。

それさえやれば、覚える算数にならないとまではいえませんが、覚える算数になるリスクはかなり軽減されると思います。

ここのページは偏差値65を目指す子に向けた内容ですので、そのレベルは考えていないという場合は、場合の数よりは、平面図形が良いと思います。

平面図形も場合の数と同様に、1週間に60分で十分です。

しかし、案外、場合の数は無理かもしれないけど、とりあえずやってみますという方のうち何割かは、しっかりできたとおっしゃってくださっています。

まずは、学習の質向上を目指して、お試しください。