プロ野球で、よく「名選手、名監督であらず」などと言われます。
現役時代はスター選手でも、名監督にはならないというものです。
とても不思議な格言です。
なぜ名監督にならないかではありません。
そもそもほとんどの監督は、現役時代は大スターかスター選手でした。
強いチームの監督も元スター選手、弱いチームの監督も元スター選手です。
歴代名監督を振り返ってみると、名選手が多いです。
歴代ダメ監督を振り返ってみると、これまた名選手が多いです。
勝負事なので、勝ちがあれば負けもあります。
名選手たちが監督になって勝負すれば、必ず負ける監督がでます。
ときどき、現役時代はあまりふるわなかった元選手も監督をします。
しかし、そういう監督は、人望が厚かったり、2軍監督やコーチで活躍して昇格したわけです。
現役時代は大したことがなかったけど、確信的に1軍監督になっています。
その事象を見て、名選手じゃない方が良い監督の確率が高いというのも明らかに間違っています。
今回も受験ブログらしくないところから始めてしまいましたが、
本題は、算数の問題を解く力がとても高い講師が授業を担当したら、生徒はできるようになるかというテーマです。
ちなみに私自身のことはよく分かりません。
教え方は、他人の授業見学をすれば比較できますが、解く力は比較しようがないのです。
テストを受けて成績が公表されることがないので。
ミスがほとんどなく常に模範解答を出せる講師もいますが、そういう講師は学力が高いとは思いますが、
はっきりとは分かりません。
クルマのドライバーと同じで、きっとみんな平均よりは上と思っているかもしれません。
よく、学力が低い生徒さん(の保護者)は、
算数が得意な先生は、苦手な子の気持ちが分からないから、
小さい頃は算数が苦手だったけど克服して得意になって、その勢いで講師をやっているような人に教わりたい
というような希望があるようです。
言いたいことは分かりますが、そういう該当者はいないような気がします。
算数と数学は別物という見方もできますので、
思考系の算数は苦手だったけど、数学からは得意という人はいるでしょう。
でも、それは克服したというよりは相性の問題だと思います。
中学の数学は苦手だったけど、高度になった高校の数学からは得意という人はいるのでしょうか?
難しいほど燃える人?
数学は基礎の土台が固まっていないと次に進めないので、
高校の数学ができるということは、中学の数学などは完璧にできるはずです。
中学の数学が苦手で、分からない人の気持ちも充分に分かるほど大変だったけど、
高校の数学は得意で勉強を教えたくなるほどできるようになるというのは想像できません。
中学の数学があまりパッとせず、高校の数学もあまりパッとせず、
でも、なんとなく塾講師をやっている人がいるとします。
100%と言っていいほど、暗記の算数、暗記の数学になると思います。
算数・数学が得意な人は暗記で身につけたわけではありません。
理解して身につけています。
それがベースとしてあるので、生徒さんに理解させようという授業になります。
「移項は、符号を代える」
「マイナスとマイナスをかけるとプラス」
「1次関数でこれは傾きでこれは切片を表す」
「方程式を解くとなぜか交点が求まる」
「解の公式は~」
「微分は係数にかけて次数を下げる」
こんな暗記のような身につけ方で、なんとかセンター試験でそれなりの点数を取って、
という講師だと、「こうやればできるよ」という結果論の授業になり、
生徒さんの考える力が育つことはないでしょう。
算数は、算数が得意だった講師に教わることが大前提ではありますが、そこにも落とし穴があります。
算数が得意なタイプは自分で考える力があります。
公式だけを教わっても、どうしてそうなるか考えたり、応用した使い方も理解できるというように、
プラスアルファを作り出せます。
よく、分数のわり算とか、円の面積の公式とかで、
とにかく最初はやり方だけ身につけて、
問題を解いていく中で徐々に自分のものとなり、奥深くいろいろなことが分かっていくという指導論を聞くことがあります。
というより、とてもよく聞くので、私も以前はそういう考え方に近かったと思います。
これがまさに算数が得意な人の論理です。
「自分がそれでできるようになって今日があるので、他人も同じだろう。」という論理です。
それでできるようにならなければ文系ですね!
そんな感じでしょう。
塾でもよく見かける光景です。
やり方は教わって身につくけど、深く理解できていないので、
典型題はなんとかできるけど、応用になると…
算数が得意な人は応用力が自然と発生するので、
そういう子たちとくらべて、辛い思いをしているのではないでしょうか。
塾の立場からすれば、算数も競争なので、
やり方を教えただけで応用力がつく人が、できる人
典型題はできるけど応用が利かない人は、普通の人
典型題もマスターできない人は、できない人
このように分類することで、塾として不都合があるわけではありません。
この流れからすれば、もう解決法は分かりますね?
解き方だけ身につけてその後の応用力の自然発生を期待する勉強は控えることです。
公式は、どうしてその式で求められるか
面積図はどうしてその面積図をかくのか
なぜ逆比が使えるのか
というように、やることすべてについて、どうしてか説明できる状態をつくることを目指すと良いと思います。
そんな勉強をしていたら、宿題ができないと思われる方もいるかもしれませんが、
本末転倒です。
短期目標よりも長期目標が大切です。
いま問題があまりこなせなくて点数が取れなくても、
公式がしっかり分かって自分のものになっていれば、やがてそれを応用する力が湧いてきます。
自学自習で難関中を目指す教材の「対話式算数」は深く理解することを重視していますが、
今年から発行しています公立中進学者向け教材の「もっとも深く学べる算数」は短期目標がないだけに、さらにゆっくり深く説明しています。
「もっとも深く学べる算数」は、私立難関中学を目指すならばものたりない教材ですが、
高校受験だけでなく、公立中高一貫校で求められる深い思考力の育成には最適です。
問題を解くことを主眼においているわけではありませんので、より深く学べる仕様になっています。
「対話式算数」は、通塾生向けに本編のみだけを販売していますが、
それは塾のテキストの参考書の位置づけとしてです。
塾のカリキュラムとは別に、気楽に読書として深く学べたらということなら「もっとも深く学べる算数」の方が良いような気がします。
例えば、割合の分数のかけ算なら、分母で割って、分子をかけるイメージで充分です。
それをくり返し学習して自分のものとなります。
分母どうしをかけて、分子どうしをかけるなんて覚えても応用力は発生しません。
分数のわり算なら、分母をかけて、分子で割ればいいのですが、そのイメージをなんらかの方法でつくっていく必要があります。
かけ算よりもイメージのつくり方は難しいですが、できないわけではありません。
わり算は「割る」を「かける」に代えて、分数を逆数へではイメージはつくれません。
公文をやっても伸びる子と伸びない子がいますが、
どうして公文をやっても伸びない子がいるのかが説明できそうです。
公式を身につけて、その後、自分で応用力を築いていくことが苦手なタイプは、
地頭とか素質とかセンスがないと諦めずに、そういうタイプ向けの学習をすることが望ましいです。