- 2019年6月26日
スカイプ指導を始めて、家庭教師の求人なども少々気になるようになりました。
ときどき見かけますが、
- 学歴が高くないとダメ
- もともと得意な人よりも苦手で克服した人に教わりたい
サラッと聞くと間違ったことではないようですが、少し考えると、まったく正しくありません。
1の学歴が必要という論理は、
「実践できるノウハウを持っていることの証明」ということのようですが、
理解力が各自違うわけですし、実践できるかどうかも能力のうちの1つですので、
その成功者が自分のときのノウハウを生徒さんに伝授したとしても上手くいく確率は相当低いでしょう。
塾講師をやっていれば分かりますが、自分が現役のころの経験はほとんど生かされません。
理解力が違うからです。
「授業聴いてれば十分身につくよね!」
こんなことを言って指導になるでしょうか。
どこでつまずいているか、どこを改善したら上昇していくかを過去の生徒さんにあてはめたり、想像したりして、提案しているわけです。
学歴重視の意見を見ると、塾講師未経験の人の単純な感想なんだろうなと思ってしまいます。
では2の苦手だったけど克服できたという講師です。
苦手だったけど、その後、その克服した教科をしっかり研究しているのなら良いのですが、
学生の間に苦手から得意になっただけでは、何を伝授できるのでしょうか。
私も小学生のころは国語は苦手でしたが、センター試験のころには現代文はかなり得意でした。
得意になったきっかけは、作者は何を伝えたいんだろうと考えるようにしたからです。
見違えるように正答率が上がったのですが、
「作者の言いたいことを考えよう!」
それだけの体験談で国語の講師などできるわけがありません。
同情してあげることはできても、克服するための指導は、教え方の研究が欠かせないのです。
ここまでもそれなりにブログになっていますが、今回のテーマはこれとはまったく違います。
そろそろ本題に入ります。
塾の上位クラスでは難関校合格のために力量のある講師が教え込みます。
塾ではかなり難しい問題も扱われることでしょう。
塾では解けずに、解説を聴いて、家で復習をしたら解けて「ハイ終了!」というのが良いサイクルのようではありますが、
そのレベルの問題がいつまでたっても自力では解けない場合があります。
教わった問題は解けるんだけど、初見の問題に弱いというパターンです。
それは、生徒さんの資質の面もありますが、指導者の指導スタイルによるところもあります。
前職で、指導力が不足していたけど小学部の責任者で上位クラスを担当していた講師がいました。
典型題すら教えることができずに、クラス平均偏差値はとても低かったですが、思考力のある子が多かったです。
偶然ではないと思っています。
典型題さえ初見の問題として考えさせることで、思考力がついたのだと思います。
イメージしやすいように脚色して極端な例を挙げてみます。
円の面積です。
公式を覚えてしまえば計算練習ですが、
毎回、円を切って長方形に並べて~とすれば、かなり思考力がつきそうですよね。
さすがに、そんな指導をしていたわけではありませんが、典型題として教わるよりも鍛えられていたわけです。
ではそれがベストかというと、もちろんそんなことはありません。
典型題ができるかどうか不確定な思考力問題になってしまう訳です。
合格実績はひどいものでした。
でも、それとは正反対に典型題の解き方を教え込んでいくと、思考力が育たない場合があります。
抽象的なような具体的なような話になりますが、
問題を生徒さんが見たときに、
- さあ考えよう!
- どの解き方かな
1は算数の問題を考える姿勢です。
2は以前身につけた解き方から探す姿勢です。
どちらの姿勢が強いかが大切です。
1だとしても、結局は以前身につけた解き方とリンクして解くことになりますが、
最初の姿勢が1なのか2なのかによって思考力・応用力に大きな差が出ます。
整理の仕方を覚えさせることはとても重要だと思いますが、
その問題の解き方を覚えさせることは、2につながりやすくなってしまいます。
「○○算と同じように解いてみました」
こう言って出鱈目な解き方をする生徒さんもよく見かけます。
2の傾向が強いです。
典型題なら解き方を覚えるのは必須ですので、解き方をきちんと覚えることがダメだとは言いませんが、
何でもかんでも解き方を覚えようというする姿勢はよくありません。
典型題と思考系をきちんと分類しなくてはならないのです。
その分類ができない講師、分類をする概念のない講師に教わると応用力が育たなくなってしまうという訳です。
大手塾の上位クラスの講師といっても分類している講師ばかりではありません。
分類するのはむしろ少数派かもしれません。
冒頭で書きました、学歴の高い講師、努力で克服した講師が
そのスペックだけで、
典型題は教え込もう!思考系は考える力をつけよう!
このように分類できるとは思いません。
失敗と成功の経験から築き上げていくものだと思っています。
話を少し変えて、では、どうしたら思考力・応用力をつけられるかというとを考えてみます。
答えは単純で、塾に期待しないことです。
塾でも、きちんと典型題の教え方と思考系の教え方を区別して、考える力を育むことができる講師もいると思いますが、
保護者様や生徒さんにはその判断は難しいでしょう。
私が授業見学をすれば、教え方によって鳥肌が立ってきますので、体で判断しますが、
だれでもそのように体が反応する訳ではありません。
そうすると、基本的には「思考力は家でつけるもの」という作戦を立てた方が無難だと思います。
良問を解くのは大前提ですが、
解けなかったときに、解き方を身につけるのではなく、書き方を覚えていく勉強が大切です。
それから、論理のつながらないときに、いい加減につなげて解けた気分になるのは、百害あって一利なしです。
「○○だから□□」という接続をたくさん作っていかないといけません。
問題数はたくさんやるにこしたことはないのですが、たくさんやると、精度は反比例して下がります。
精度が下がるのならやっても効果がありませんので、1週間に2問くらいでも良いと思います。
塾の典型題の復習に時間がかからないお子様は、そのような自己鍛錬の学習をもっとできますが、
それでも1週間に2~5題くらいで十分だと思います。
良問ならなんでも良いですが、解けない問題があった場合は解説も良くないといけません。
算数教材塾・探求では、レベルに応じて小4グランプリ算数・小5グランプリ算数をお薦めしています。
「論理がつながるように」との一心で対話式の解説にしています。
苦労話を書いても仕方がありませんが、普通の解説を書くのと対話式の解説を書くのでは負担が何倍も違います。
制作時間も3倍くらいはかかっていると思います。
どうしてそんなことをしたのかと言えば、もちろん論理的に考えられるようにです。
思考力のあるお子様に解いて欲しい教材ではありません。
思考力をつけたいお子様に解いて欲しい教材です。
他の教材を批判しようとは思っていませんが、書店で見かける思考系の難問充実の教材は、
「いったい誰が解くの?」と思ってしまうことが多々あります。
思考力が十分な生徒さんの暇つぶし?
偏差値65の生徒さんを70に引き上げるため?
でも、それならば、難関中学の過去問集でも事足ります。
難問を解けるようになりたいと考えると、難問までのステップを練習するべきですが、
多くの保護者は最初から究極系の難問集を手にしてしまうようです。
正しい学習をして難問に強くなって欲しいです。